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2024.01.20 08:00

「AI搭載スマートグラス」でアップルに対抗する、Brilliant Labsの挑戦

日下部博一
ブリリアント社は、最新の評価額の公表を避けたが、メタが買収したOculus VRの共同創業者であるブレンダン・イリベや、スマートウォッチメーカーPebble(ペブル)の創業者エリック・ミギコフスキー、給与計算会社Paylocity(ペイロシティ)の創業者スティーブ・サロウィッツを含む投資家から、600万ドル(約8億9000万円)を調達したと述べている。また、その他の出資元には、PayPal(ペイパル)の初期投資家のPlug and Play Venturesや、ベンチャーキャピタルのCoho Deeptechなどが挙げられる。

スタートアップ2社での経験

タバンガーは、ケンブリッジ大学で経営学の修士号を取得した後、2012年に初めてAR分野に進出した。彼は、既存のハードウェア・プラットフォーム向けにAIを搭載したコンピューター・ビジョン・ソフトウェアを開発する2つのスタートアップに関わったが、いずれも事業を維持するのに十分な収益を上げることができなかった。彼はまた、その2社の経験から、コンシューマ向けのARデバイスを成功させるためには、ハードとソフトの統合が重要であることに気づいた。

その後、タバンガーは上海でアップルのプログラム・リードの職に就いたが、独自のARデバイスを作りたいという野望が色褪せることはなかった。

タバンガーは2019年に香港でブリリアント社を設立し、昨年シンガポールに同社を移転した。彼は、ストックホルムを拠点とするヘッドエンジニアのラジ・ナカルジャと、上海を拠点とする主任デザイナーのベン・ヒールドを加えた3人のチームで会社を運営している。

一方、ブリリアント社は、アップルとメタという2つの大手との競争に直面している。アップルは2月に待望の複合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro(ビジョン・プロ)」を、3499ドル(約52万円)という高価格で販売開始する。

メタは、10月に最新の複合現実ヘッドセットの「Quest 3」を発売した。価格は499ドル(日本では7万4800円)からだが、まだキラーアプリが不足していると識者には言われている。同じ10月にメタは、サングラスメーカーのレイバンと共同開発したスマートグラスの販売も開始した。299ドル(約4万4000円)と比較的低価格で販売される同社のスマートグラスは、アマゾンやスナップが提供するものと似ているが、ARレンズは搭載されておらず、その機能は写真やビデオ撮影、通話、音楽鑑賞などに限定されている。

タバンガーによれば、他の企業が一般消費者向けにリリースしたヘッドセットは、大きくて重量が重いため、ユーザーをソファや椅子に座らせておくように設計されているものがほとんどだという。一方、ブリリアント社のスマートグラスは、「生成AIのパワーによってエクスペリエンスが拡張されることを望むアクティブな人々」向けに設計されている。

タバンガーにとってのもうひとつの大きな懸念は、データのセキュリティだ。彼が開発したスマートグラスは、装着者が見たものや行動を記録する機能を持つため、データの保護が重要だ。この問題に対処するためにブリリアント社は、データを会社のサーバーに残さないようにし、第三者に渡らないようにしている。

タバンガーは、ARの大規模な普及が間近に迫っていると予測しており、2025年にそのタイミングがやって来ると考えている。なぜなら、その頃には開発者たちがARのポテンシャルを最大限に活用する方法を考え出し、一般消費者向けのさまざまなアプリが開発されるからだという。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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