先端テクノロジーも社会課題も
では、どんなアーティストが選ばれるのか。「アートコレクティブとしてMUTEKでしかありえないような表現の形をキュレーションすること」を大切にしていると岩波は明快に応える。例えばO-EASTの舞台に登場したノイズアーティストのPhew、エクスペリメンタルアーティストであるOren Ambarchiは、MUTEK.JP にてワールドプレミアライブを披露し、唯一無二のパフォーマンスを行う画家、中山晃子のライブペインティングをキュレーションしたことで貴重なコラボレーションが実現できた。
「技術の発展でAIジェネレーティブアートをわれわれは目にするようになり、さらに映像技術の進化により、非常に繊細な表現も可能になりました。そのなかで、今回出演していただいた中山さんのライブペインティングは“ヒューマンジェネレーティブアート”と呼びたいほどの、美しい芸術の象徴です。
筆により落とすひとしずくの絵の具が描き出すアート、息を吹きかけられた液体の流れていくさま。それらの表現は彼女しか持っていない芸術であり、一期一会のステージがもつ、そのときにしか感じられない大きな価値であるということで提案させていただきました」(岩波)
そのほか、多くの観客やアーティストが“ベストアクト”としてあげた真鍋大度や、世界で起こる紛争をテーマに強いインパクトを残したイタリアの芸術集団SPIRE.IMなど、最新のテクノロジーを用いた多様なパフォーマンスが披露された。
「みなさんの表現がまったく違っていたのは、いま振り返ると興味深かったなと思います。見た人が夜も眠れなくなるほどの強い衝撃を与えるものから、ユーモラスなキャラクターが最先端の技術により“これはどうやって動かしているんだ?”と驚かせるようなものまで。MUTEKというひとつのプラットフォームでありながら、さまざまな形で今を感じられるものになったかと」(竹川)