メディアアートの未来に触れる 日本で8回目の「MUTEK.JP」をレポート

先端テクノロジーも社会課題も

では、どんなアーティストが選ばれるのか。「アートコレクティブとしてMUTEKでしかありえないような表現の形をキュレーションすること」を大切にしていると岩波は明快に応える。

例えばO-EASTの舞台に登場したノイズアーティストのPhew、エクスペリメンタルアーティストであるOren Ambarchiは、MUTEK.JP にてワールドプレミアライブを披露し、唯一無二のパフォーマンスを行う画家、中山晃子のライブペインティングをキュレーションしたことで貴重なコラボレーションが実現できた。

(c)MUTEK.JP

Phew&Orn Amrbarchi+Akiko Nakayamaのステージ。中山が「Alive Painthing」と呼ぶパフォーマンスは、Alifeを想起させる生命感に満ちた表現。作り出した大きな気泡は、まるで胎児の目のよう。生成AIの時代にあって、人の手が生み出す芸術の価値を考えさせられる。

「技術の発展でAIジェネレーティブアートをわれわれは目にするようになり、さらに映像技術の進化により、非常に繊細な表現も可能になりました。そのなかで、今回出演していただいた中山さんのライブペインティングは“ヒューマンジェネレーティブアート”と呼びたいほどの、美しい芸術の象徴です。

筆により落とすひとしずくの絵の具が描き出すアート、息を吹きかけられた液体の流れていくさま。それらの表現は彼女しか持っていない芸術であり、一期一会のステージがもつ、そのときにしか感じられない大きな価値であるということで提案させていただきました」(岩波)

そのほか、多くの観客やアーティストが“ベストアクト”としてあげた真鍋大度や、世界で起こる紛争をテーマに強いインパクトを残したイタリアの芸術集団SPIRE.IMなど、最新のテクノロジーを用いた多様なパフォーマンスが披露された。
SPIRE.IMはイタリアのトリノを拠点とする芸術集団。地球温暖化などの現代における社会問題に焦点を当てる彼らは今回、紛争をテーマにした没入感の高いパフォーマンスを披露し聴衆を圧倒した。

SPIRE.IMはイタリアのトリノを拠点とする芸術集団。地球温暖化などの現代における社会問題に焦点を当てる彼らは今回、紛争をテーマにした没入感の高いパフォーマンスを披露し聴衆を圧倒した。

「みなさんの表現がまったく違っていたのは、いま振り返ると興味深かったなと思います。見た人が夜も眠れなくなるほどの強い衝撃を与えるものから、ユーモラスなキャラクターが最先端の技術により“これはどうやって動かしているんだ?”と驚かせるようなものまで。MUTEKというひとつのプラットフォームでありながら、さまざまな形で今を感じられるものになったかと」(竹川)
実験的な探求と創造に取り組み続ける音楽家、日野浩志郎のソロプロジェクトであるYPY、そして太鼓と中心とする伝統的な音楽芸能の現代への再創造に挑戦する集団である鼓動によるコラボレーション。Seiichi SegaのジェレラティブなCG表現とともに巨大な太鼓の音が響き渡るステージは、特に海外からの参加者に公表を博した。

実験的な探求と創造に取り組み続ける音楽家、日野浩志郎のソロプロジェクトであるYPY、そして太鼓と中心とする伝統的な音楽芸能の現代への再創造に挑戦する集団である鼓動によるコラボレーション。Seiichi SegaのジェレラティブなCG表現とともに巨大な太鼓の音が響き渡るステージは、特に海外からの参加者に公表を博した。

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取材・文=青山 鼓

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