北米

2024.01.15 12:30

ホームレスには「路上で寝る権利」があるか? 米最高裁が判断へ

安井克至

SAN FRANCISCO, CA - AUGUST 28: Homeless encampment is seen in Tenderloin District of San Francisco, California, United States on August 28, 2023. (Photo by Tayfun Coskun/Anadolu Agency via Getty Images)

ホームレス問題への対応に苦慮する都市が増え続ける中、米最高裁は1月12日、各地の自治体がホームレスが公有地で寝ることを禁止できるかどうか、あるいはホームレスが公有地で寝る憲法上の権利があるかどうかについての審理を開始すると発表した。

最高裁は、サンフランシスコの連邦巡回控訴裁判所が下した一連の判決を審理しようとしている。2022年の控訴裁の判決では、オレゴン州のグランツ・パス市の当局が「ホームレスの人々に寝る場所を与えない」という「残酷で異常な」条例を用いて住民の憲法修正第8条の権利を侵害したとされた。

控訴裁は、行き場のないホームレスの人々が屋外や車内で寝ることを、市は禁止できないと主張した。この裁判の原告側は、グランツ・パス市の当局が「たとえシェルターが利用できない場合でも、公共施設での寝泊まりを禁止する条例」を2013年に積極的に施行し始めたと主張していた。

ホームレス問題はここ数年、民主共和両党の議論の焦点となっており、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事(民主党)は、ホームレスの屋外での寝泊まりが、住民や地域社会にとって「危険で不健康な状況を助長する」と主張している。

米住宅都市開発省(HUD)のレポートによると、昨年、米国のホームレスの数は過去最高を記録し、1年間で12%も急増した。HUDによると、2022年1月にホームレス状態にあった人は全米で約65万3000人で、1年間で7万人以上増加していた。

ホームレスの数は2010年から減少し、2017年には55万4000人を記録したが、最近になって再び増加している。専門家は、その理由の1つに、手頃な価格の住宅の不足と住宅価格の上昇を挙げている。一方、HUDは、最近のホームレスの急増は、家賃滞納者への立ち退き猶予措置を含む、新型コロナウイルス対策の支援プログラムが2021年に終了したことが一因だと報告書で述べていた。

ホームレスの急増は、全米最大のホームレス人口(全米のホームレスの28%がカリフォルニア州にいるとされる)を抱えるカリフォルニア州を含む、各地の重要な政策課題となっている。昨年10月にニューサム知事は、7都市で700戸以上の住宅を建設するなど、ホームレス問題に取り組むことを目的とした一連のイニシアチブを発表した。

また、昨年9月にサンフランシスコの裁判所が、当局がホームレスの野営地を撤去することを認める判決を下して以降、州の他の取り組みも、人々から寝る場所を取り上げる方向に傾いている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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