モノづくりのノウハウと研究を結びつける
医療機器製造の栃木精工(栃木県)も、こうした類いのチャレンジをしている会社だ。社長の川嶋大樹氏は、注射針やカテーテルなどを主製品とする家業を継いで以降、「菅状」のさまざまな製品を精密かつ衛生的に量産することができるその技術力を生かして、大きく売り上げを伸ばし続けてきた。そんななかで、今、東大発の研究技術ベンチャーと共に取り組んでいるのが、生体膜に近い構造をもつ特殊なポリマーを使った注射針の製造だ。かねてから医療機器の使用で起きてしまう金属アレルギーについて課題を感じていたそうだが、針先などに塗布するだけでアレルギーを防ぐことができるこの特許技術を応用すれば、世界中の金属アレルギーをもつ人たちへの医療行為が今以上に安心安全なものになるのではないかと、新事業へ注力している。医療商材のため安全性への配慮から時間はかかってしまうだろうが、ぜひ頑張ってほしい。
日本にはこういったモノづくりのノウハウをもつ地方の優良中堅企業がたくさんあり、その社長たちは強いリーダーシップと行動力、商売への嗅覚、そして技術への理解をもち合わせている。日本中にいるこのようなパワフルな社長たちと、年間総額で18兆円が投下される研究開発を結びつけることは、世界的にも競争力のある高度技術を伴った新事業が日本から次々と生まれていく黄金パターンになっていくに違いない。
なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。