AI

2024.01.13 08:00

日々増える人工知能の「電力使用量」、次の批判や規制対象になる可能性

安井克至

AIの消費電力が新技術の環境への影響をめぐる次の争点になりそうだ(shutterstock.com)

AI(人工知能)は、SFファンタジーから現実の主流へと進化した。現在、AIは検索エンジンから音声アシスタントに至るさまざまなオンラインツールを動かす力となっており、医療画像解析から自動運転車まで、あらゆるものに使用されている。しかし、AIの進歩は間もなく、もう1つの喫緊の課題であるエネルギー消費と衝突することになる。

現在の暗号資産と同様に、AIはその高い電力消費傾向から批判や規制の対象になる危険性がある。AIに楽観的な人々が、さらなる計算能力を使う継続的な進歩を称賛する一方で、悲観的な人々は、AIの電力使用を無駄で危険でさえあると主張し始めている。こうした非難は、近年の暗号マイニングに対して行われたものと似ている。間違いなく、AIへのエネルギー供給を制限することで、AIの技術革新の息の根を止めようとする動きがさらに強まるだろう。

悲観論者たちはいくつかのもっともな理由を挙げている。より能力の高いAIを開発するには、膨大なコンピューティングリソースが必要だ。たとえば、OpenAIのChatGPT-3をトレーニングするのに使用された計算量は、800ペタフロップスの処理能力に相当し、世界で最も強力な20のスーパーコンピュータを合わせたものに匹敵する。同様に、ChatGPTには毎日何億もの問い合わせが寄せられている。試算によれば、これらの問い合わせに応答するために必要な電気は、毎日1GWh必要で、これは米国の家庭約3万3000世帯分のエネルギー消費量に相当する。そしてこの需要は将来さらに増加すると予想されている。

ある意味、どれも目新しい話ではない。インターネットの黎明期から、エネルギー消費に対する懸念はあった。サーバー、データセンター、接続機器のネットワークが拡大するにつれ、電力需要も拡大してきた。自然保護論者たちは、オンラインサービスの24時間365日の可用性を維持するために必要な、エネルギーを大量に消費する施設や装置の継続的な稼働が、環境への影響につながることを以前から指摘してきた。

暗号資産や初期のインターネットがそうであったように、AIのエネルギー消費も適切な文脈がなければ衝撃的なものに見えるかもしれない。批評家たちが、AI計算量の急成長を過剰で不必要で危険なものだと非難するのは必至だろう。しかし、AIが労働者をより生産的にして、たとえばプログラマがコードを書く時間を節約し、研究者が記事を探して読む時間を節約し、普通のオフィスの従業員が反復的な作業や文書作成に費やす労力を節約できるなら、AIは必然的に多くのエネルギーを節約するだろう。

さらに、これらのエネルギーの節約には、AIがもたらすその他の直接的な利益は考慮されていない。唯一の要素ではないが、計算量を追加することで、自然言語処理からコンピュータビジョンに至るまでのAIの能力が強化される。ただ問題に計算量を投入するだけでは進歩は保証されないが、確実に意味のある改善をもたらす。計算量はAIイノベーションの燃料となるのだ。
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翻訳=酒匂寛

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