中東諸国では現在、マクドナルドがイスラエル軍を支援しているとして、同社をボイコットする動きが広がっている。これに対し、同社のケンプチンスキーCEOはビジネス向け交流サイト(SNS)のリンクトインに、マクドナルドの中東のフランチャイズ店は「地元の経営者」が所有し「数多くの同郷市民を雇用しながら、地域社会に奉仕するためにたゆまぬ努力を続けている」と投稿。マクドナルドはイスラエルや現在進行中の戦闘を支持するいかなる声明も出していないとし、「暴力」と「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」を非難しながら、同社に対する不買運動を「失望させる根拠のないもの」だと訴えた。
中東全域で不買運動が繰り広げられている一方で、マクドナルドは昨年第4四半期の世界全体の売上高が前年同期比10.9%増加したと発表した。
また、米コーヒーチェーン大手のスターバックスも中東と北米の双方で抗議運動や破壊行為に直面している。こうした行為について同社のラクスマン・ナラシムハンCEOは、インターネット上で拡散された「当社が支持するものに対する誤った表現に影響されたもの」だと指摘した。
スターバックスはかねてより、会社としての政治的意図はなく、暴力やヘイトスピーチを非難すると表明していた。ところが、同社の米国内の約350店舗を代表する労働組合が、ソーシャルメディア上にパレスチナ寄りの投稿をしたことで自社のブランドを傷つけたとして、同組合との訴訟問題に発展している。だが、マクドナルドと同様、スターバックスの昨年第4四半期の世界全体の売上高も前年同期比8%増加した。
パレスチナ自治区ガザを支配するハマスの武装勢力は昨年10月7日、イスラエル南部への大規模な攻撃を開始した。イスラエル側の死者は1200人以上に上り、約240人が人質に取られた。イスラエルは戦争状態に入ったと宣言し、ハマスへの反攻を開始。ハマス側の保健省によれば、戦闘開始以降、ガザ地区では2万2000人以上の死者が出ている。
これを巡り、中東ではイスラエルや欧米の企業に対する抗議やボイコットが広まっている。マクドナルドは主に地元のフランチャイズ店で成り立っているが、イスラエル国内の店舗が開戦後に自国の兵士に無料で食事を提供したと報じられたことで、早くから批判にさらされていた。サウジアラビアやトルコなどイスラム教徒が多数を占める国の同社フランチャイズ店は、直ちに反発した。
外食産業以外の企業も、経営上の決断を迫られている。先月にはスペインのアパレル大手ZARA(ザラ)が、手足のないマネキンとともにがれきの中に立つモデルの広告を掲載したことで、不買運動を巻き起こした。この広告は現在進行中の紛争をないがしろにしているとして、ソーシャルメディア上で反発を招いた。同社は、この写真はガザ紛争が勃発する前の9月に撮影されたもので、批判は「誤解」から生じたものだと説明しながらも、広告を取り下げ、謝罪に追い込まれた。
英ロイター通信によると、トルコ議会は11月、米飲料大手コカ・コーラとスイス食品大手ネスレに対する「世論の大きな反発」により、議事堂内のすべての食堂から両社の製品を撤去した。議長は「イスラエルの戦争犯罪に公然と支持を表明した企業」に対する決定だと説明。だが、コカ・コーラもネスレも、ガザ紛争を支持するとは表明していない。
(forbes.com 原文)