国内

2024.01.17

米国展開に「強い手応え」世界で製造業のポテンシャル解放へ

加藤勇志郎|キャディ

Forbes JAPAN2024年1月号の特集「日本の起業家ランキング2024」で5位に輝いたキャディの加藤勇志郎。

米国展開を本格化した加藤は、世界の「製造業のポテンシャル解放」に向けて確かな手応えを感じている。


「米国で通用する事業をつくっていくことは、グローバルで成功するためにも重要なチャレンジ。そこに今、強い手応えを感じています」。キャディ代表取締役の加藤勇志郎は、2023年から取り組む米国展開についてそう話す。

ハードとデジタルの両面から製造業の調達領域における業務効率化、コスト削減などを支援するキャディ。主力の部品調達プラットフォーム「CADDi MANUFACTURING」は、国内の産業機器メーカーの売り上げ上位20社のうち75%との取引実績を誇る。22年6月に提供を開始した図面データ活用クラウド「CADDi DRAWER」も、スバルやスズキ、東京エレクトロン、日立ハイテク、川崎重工業などの大企業が続々と導入。「日本を代表する企業が図面データやサプライヤー、調達する部品の価格といった重要な情報をクラウドで管理するようになりました。部門や支店単位ではなく、全社規模での導入もある」と加藤は自信を見せる。

サプライパートナー網の拡大のためベトナム、タイに拠点を開設していた同社だが、23年1月、満を持して米国シカゴに市場開拓に向けた現地法人を開設した。加藤は自ら現地に乗り込み、100人体制の組織づくりを進めるとともに、トップセールスにまい進している。

米国では、高インフレに伴いサプライヤーの値上げ圧力が強まっており、メーカー側では部品調達におけるコスト削減への要望が拡大。発注者の設計データを独自システムが自動解析し、国内外に数百社あるパートナーから最適な業者を選定することで調達コストを削減するCADDiMANUFACTURINGの強みを生かしやすい。加藤が言う。

「日本では1000社以上の町工場を訪問してきましたが、米国に輸出している会社には会ったことがありませんでした。それが今では、40人くらいの会社がキャディを介して普通に輸出している状況です。『製造業のポテンシャル解放』を掲げている僕らにとって、その一歩が踏み出せているのはうれしいこと」

一方、加藤が日本以上に強い需要を感じているのがCADDi DRAWERだ。米国の人材は転職を繰り返すことが多いため、企業にとってナレッジの属人化は大きなリスクになる。また、M&Aも盛んだが、グループ内の各社で図面データを管理していて、新たな発注の際に、グループ会社が設計した類似図面をうまく活用できないといった課題がある。「人と企業、それぞれの流動性が高いので、『図面データを資産に変える』というサービスコンセプトは、非常に刺さりがいい」。

キャディは30年にCADDi MANUFACTURINGの売り上げ1兆円、CADDi DRAWERの販売総額1000億円を目指している。前者は「すでに投資を抑えれば黒字を出せるレベルに成長している」と言い、後者についても「海外のSaaSと比べてもトップクラスの成長率」と加藤は強気だ。売り上げ目標の過半は米国で稼ぎ出す野心的な構想を掲げる。

米国で成功したといえる日本のスタートアップは数える程度で、ソフトウェアに至ってはいまだ皆無。「これからが本当の勝負。がんばってやっていきたい」。加藤は24年、シカゴに住居を完全に移すことも視野に入れ、米国展開をさらに加速させていく。


加藤勇志郎◎1991年生まれ。東京大学経済学部卒。2014年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。大手メーカ ーに対する購買・調達改革の支援に従事。16年に同社マネージャーに就任。17年11月にキャディを創業した。

文=加藤智朗 写真=スティーブン・メッツァー

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事