桐蔭横浜大学の宮坂力教授が開発したペロブスカイト太陽電池は、一部で量産化が始まっているものの、水分や酸素の影響で結晶の結合が乱れ発電効率が大きく落ちる。また熱による劣化という問題もあり、耐用年数が短いという弱点がある。
そこで岡山大学のヒサム・エルボヒー外国人客員研究員、鈴木弘朗助教らを中心とする研究グループは、中国の南方科技大学との共同研究で、ベンゾフェノン(BP)という分子を添加するとペロブスカイト太陽電池の安定性と性能が向上することを発見した。BPを添加したペロブスカイト太陽電池は、室温で湿度30パーセントの環境では700時間経過した時点でも90パーセントの性能を保持した。添加しない場合は、同環境で300時間以内に30パーセントにまで低下する。
ペロブスカイト太陽電池はレアメタルを必要としない。フィルムに薄く印刷して作られるので、現在主流のシリコン太陽電池と比較すると製造コストは数分の1。そのため製造工程での二酸化炭素排出量も削減でき、廃棄の問題も大幅に軽減される。しかも放射線には強いという特徴がり、JAXAも宇宙での利用に向けて開発を進めている。
とにかくいいことづくめのペロブスカイト太陽電池の唯一の弱点だった耐久性が、この岡山大学の研究チームの発見で大幅に伸びるとなれば、太陽電池を取り巻く世界が一気に進化する可能性がある。
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