久元喜造市長は「再び人口増に転換するという可能性はほとんどないのではないか」と指摘しており、「これからは人口増を狙うのではなく、人口減少を前提にまちづくりを考えていくべきだ」と話している。
実は神戸市は、2020年から、三宮や元町などの中心部で、建物の容積率の上限を設定するなど、事実上、高層のタワーマンションを建設できないように規制した。
それから3年を経た神戸の街で、いったい何が起こっているのかを深掘りしてみたい。
高層タワーマンションの光と影
タワーマンションに住みたいという人は増え続けている。20階以上の高層マンションは、1999年だと全国で200棟ほどであったが、2022年には約1500棟に増えた。都市中心部での居住が見直されプライバシーが優先される時代、抜群の眺望に魅力を感じる高所得者層に根強い人気がある。
このように人気があるタワーマンションの建設を、前述のように神戸市は2020年から規制。その後のタワーマンション建設の計画はゼロとなった。
神戸市で規制前、最後に新築されたタワーマンションは、中古市場で70平方メートルの部屋が、約2億円の価格が付いている。
海から近いため神戸港を見渡せるが、三宮駅からは徒歩20分であり、抜群の立地とはいえない。大阪の梅田駅から徒歩3分で同じ広さの部屋が1億5000万円なので、神戸市におけるタワーマンションへのニーズは逆に高まっていると言えるだろう。
ところが神戸市は、このような市場原理を飛び越えて、分譲型のタワーマンション自体の将来にわたる持続可能性に疑問を投げかけているのだ。
というのは、新築のタワーマンションは、分譲する際に修繕積立金を本来あるべき金額よりも安く設定されがちだ。そのほうが販売する側には有利になるからだ。
しかし、新築から数十年を経過すると、エレベータはもちろん、高圧受電設備や非常用発電機、共用部に敷設された給排水管など、一戸建てでは存在しないマンション特有の設備を、かなりの費用をかけて更新しなければならないときがやってくる。
そうなると、修繕積立金を増額して、区分所有者に負担してもらうほかない。ところが、増額を管理組合で決定するには全所有者の過半数の賛成が必要となる。
とはいえ、タワーマンションの所有者はさまざまだ。子育て世代、単身者、終のすみかに選んだ高齢者などだけでなく、賃借料を得るために投資目的で所有する人もいる。また高層と低層の住民の間では、資力や価値観が異なることが多く、修繕積立金の増額の合意をとるのは、かなりの困難を伴う。
こうして大規模修繕ができないマンションだというレッテルを貼られると、資産価値は下がりはじめる。すると資力のある人だけが売却していくという、負のスパイラルに陥っていく。
そんなマンションが街の中心に増えてくれば、見た目も悪くなり、治安も悪化するので、街全体が寂れていくおそれもあるのだ。
実は1995年の阪神・淡路大震災の前には、神戸でも三宮や元町がある中央区では人口が減り続けていた。もともとがビジネス街と繁華街だったので、ファミリー層の子育てなどには向かない街だったからだ。
ところが、都心回帰の流れが強まると、震災でビルが倒壊し駐車場などに利用されていた土地に、高層のマンションが建ちはじめた。