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2024.01.02 09:00

激化するユーチューバー戦略 TikTokに対抗し「過剰でハイペース」がトレンドに

「MrBeast」ことジミー・ドナルドソン(Shutterstock.com)

「MrBeast」ことジミー・ドナルドソン(Shutterstock.com)

ユーチューブのクリエイターたちの間では、視聴者獲得争いがますます激化している。クリエイターたちは近年、視聴者を引き付けるため、特定のスタイルやフォーマットの動画を作るようになった。

「The Game Theorists」が最近公開した動画では、こうしたコンテンツ戦略を深く検証しており、心理的なテクニックや、大きく切りの良い数字、「EVERY(全部)」 という言葉で視聴者の興味を引く手法が紹介されている。

Game Theoristsは、現在のユーチューブには「過剰さ」があふれていると述べている。例えば、人気ユーチューバーの「MrBeast」ことジミー・ドナルドソンのチャンネルでは最近、「年収1ドル対1000万ドルの仕事」という動画が多数視聴された。このタイトルは、他のジャンルのクリエイターによって模倣され、大きな成功を収めている。例えば、料理系の動画クリエイター、ニック・ディジョバンニは、「1ドルのステーキ対1万ドルのステーキ」という動画を公開した。

こうした動画の戦略は、金銭的な興味を抱かせるだけでなく、認知的な領域にまで踏み込んでいる。ゲーミフィケーションの専門家によると、現在のユーチューブのコンテンツは、ゲームでレベルをクリアするときの快感をもたらす脳の報酬回路に働きかけるのだという。

例えば、料理系動画クリエイターのジョシュア・ワイズマンはある動画で、数十店舗のファストフード店のフライドチキン・サンドを一気に紹介している。ワイズマンの早口のレビューは、視聴者が持つ簡潔で分かりやすいコンテンツへの欲求を満たすだけでなく、動画を見続けたいという思いをかきたてる。

一方、ユーチューブの絶大な影響力の核心にあるのは、そのアルゴリズムであり、注意力の持続時間が短い若いオーディエンスを惹きつけるように設計されている。つまり、長期的なエンゲージメントを維持する方法を見つけることが重要なのだ。動画のクリエイターたちは、かつて人気を博したVineのコンピレーション動画のような、場面を素早く切り替える技術を磨いている。

さらに、ユーチューブのアルゴリズムは、TikTok(ティックトック)のような短くて中毒性のあるコンテンツを好むため、クリエイターは作品に多額の投資を余儀なくされている。The Game Theoristsは、MrBeastのようなトップクラスのクリエイターのチャンネルが、100人を超えるスタッフによって運営されていることを指摘している。

しかし、潮目は変わりつつある。視聴者がこれまでのスタイルのコンテンツに飽きはじめた中で、従来のトレンドに逆らう革新的なクリエイターにチャンスが開かれようとしている。そのような形で、また新たなトレンドが生まれる可能性がある。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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