現在、ポートフォリオの一部としての非上場株式市場(プライベート・エクイティ、プライベート・クレジット、不動産、インフラなど)へのエクスポージャーは、個人投資家と富裕層とでは大きく異なっています。
これは、個人投資家が非上場株式市場に直接、あるいは間接的にアクセスできる手段が限られていることが一因です。個人投資家にとってこのことは、投資による全体的な資産形成の可能性や、市場の乱高下に耐えるという点で重要になります。
アクセス拡大のメリットとリスク
非上場株式市場へのアクセスが広がれば、分散投資が可能になり、リターンや収益の向上も期待できます。一方、プライベート投資には透明性がないため、個人投資家には不向きである可能性があります。プライベート・アセットへの投資は通常、投資家にとって迅速な清算ができないことを意味します。加えて、こうした投資は一般的に、平均的な個人投資家には手の届かない高額な手数料と最低投資金額の制約がかかります。
自由に投資できる資金量、金融教育、リスク・リターン選好度、流動性リスク(ロックアップ期間の長期化)を負担する意欲などには大きなばらつきがあり、全ての個人投資家がこうしたリスクに耐えられるわけではありません。
このことは、多くの個人投資家にとってアクセス拡大が適切でない可能性があることを意味します。
たとえば、投資可能資産が少ない層(マス・マーケット)では、投資家保護と流動性リスクへの配慮が重要になります。それに比べて、マス富裕層や富裕層の投資家は、金融教育を受けることができ、リスク許容度が高く、ファイナンシャル・アドバイザーを利用できるため、投資機会と参加意欲があります。
こうした投資家は、適切な商品へのアクセスが不足しているだけなので、非上場株式市場にアクセスする際には知識のあるファイナンシャル・アドバイザーの利用が役に立つでしょう。世界経済フォーラムの白書では、個人投資家のタイプ別に、マネージド・ソリューション(低所得者層向け)からオーダーメイドや直接投資(高所得者層向け)まで、潜在的な商品ソリューションについて論じています。
また、考慮すべき潜在的な市場全体の影響も存在します。競争の激化と価値評価圧力、逆選択リスク、市場の分断化、規制上の課題などです。多くの場合、こうしたリスクは公開市場に存在するものですが、それが非上場株式市場にどのように反映されるか予測するのは困難かもしれません。