しかし今回の研究により、過去2000年間の歴史上で特に大規模となった寒冷期は、高緯度にある火山の噴火が引き起こしていたことが示された(具体的には、過去2000年間で特に寒い10年間だったとされる西暦540年代、1450年台、1600年台が研究対象となった。そして、536年と540年の噴火、1453年と1458年の噴火、そして一般にアンデス山脈のワイナプチナ火山によるものと考えられている1600年の噴火という3つの火山活動の役割を調査した)。
そして、これらの噴火によって大気高層(30km以上、成層圏に相当)に放出された硫酸塩の量は、これまで推定されていた量の約半分であった(噴火規模が小さかった)可能性が示された。これは、高緯度における夏の気温は、想定よりも火山噴火の影響を受けやすいことを示唆している。
高緯度の地域では、極地からの冷たい空気と、熱帯からの暖かい空気が混ざり合うため、大気の循環がより複雑になる。この地域での火山噴火が及ぼす影響は、これまで考えられていたより甚大であるようだ。
また研究チームによると、火山が気候にもたらす影響は、海氷面積や、海洋貯熱量(海洋が蓄積した熱エネルギー)などの気候フィードバックによっても増幅される可能性があるという。
「われわれのデータは、地球の気候に変化が起きると、気候システムの他の要素が作用して、この最初の変化を強く増幅する可能性があることを示している」とバーク博士は述べる。「高緯度地域は、これらの増幅した気候変動の影響を特に強く受けやすい」
今回の研究論文「High sensitivity of summer temperatures to stratospheric sulfur loading from volcanoes in the Northern Hemisphere(北半球の火山が成層圏にもたらす硫黄負荷に対する夏季気温の高い感度)」は、米国科学アカデミー紀要に2023年11月6日付で発表された。セント・アンドリューズ大学は、同研究に関するインタビュー付きの記事を公開している。
(forbes.com 原文)