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2023.10.28

アイザック・ヘイズ3世、「マイクロキャストSNS」でメディア業界に挑む

アイザック・ヘイズ3世 (Photo by Paras Griffin/Getty Images for Comcast NBCUniversal)

アイザック・ヘイズ3世は、人々が最初に注目するのが自身の名前であることを知っている。父親のアイザック・ヘイズ・ジュニアは、人気R&Bシンガーで、1971年の映画『黒いジャガー』のテーマ曲を作曲し、『サウスパーク』でシェフの声を担当したことで知られている。

しかしそんな父親とは違い、ヘイズが狙うのはソーシャルメディアの世界だ。小規模なメディアが大手のレガシーメディアの市場を奪うことに賭け、2018年にソフトウエア企業Fanbase(ファンベース)を立ち上げた。「テレビの未来は個人にある」と彼はフォーブスに語った。Fanbaseは、コンテンツクリエイターを支援し、その影響力を活用し収益化しようとしている。

ヘイズは、間もなくメディア業界に転換点が訪れると考えている。かつては伝統的なテレビ局が支配的だったこの分野は、ネットフリックスなどのストリーミングを中心とした「ナローキャスティング」に移行したが、その次に来るのは、人々がSNSのパーソナリティやチャンネルをフォローするだけでなく、フィードやコンテンツを購読する「マイクロキャスティング」の時代だという。

「私たちはカルチャーと、そのインフラをひとつに統合しようとしている。現状では大手のプラットフォームとクリエイターの間に、略奪的な関係があるが、それを変えていきたい」とヘイズは言う。

ユナイテッドマスターズのスティーブ・スタウト最高経営責任者(CEO)は「ヒップホップはカルチャーをけん引しており、この分野のマーケティングはMTVやBETのような音楽ケーブルテレビチャンネルからSNSに置き換えられた。ラジオ局の役割はスポティファイとアップルミュージックが引き継いだ」と語る。

ヘイズはFanbaseの事業で、黒人のためのソーシャルメディアBlackPlanetの成功を再現しようとしている。BlackPlanetの運営元コミュニティコネクトは、2008年に3800万ドルでラジオワンに売却された。

ヘイズが20万ドルの自己資金で立ち上げたFanbaseは、これまで主にクラウドファンディングで1000万ドル以上を調達し、40万人以上のユーザーを抱えている。PitchBookは昨年3月に、Fanbaseの企業価値を5200万ドルと評価したが、ヘイズによれば、今では8500万ドル(約127億円)に上昇したという。Fanbaseは、購読料とユーザーのエンゲージメントに関連する取引で収益を得ているが、ヘイズによると黒字化はまだ達成していない。

同社は、メタやX(旧ツイッター)、TikTok、スナップチャットなどの既存の大手のSNSを競合に見据えている。

「SNSの核心にあるのは、子どもたちとブラックカルチャーのパワーだ。それがなければ、ソーシャルメディアは重要ではない」とヘイズは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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