しかしそんな父親とは違い、ヘイズが狙うのはソーシャルメディアの世界だ。小規模なメディアが大手のレガシーメディアの市場を奪うことに賭け、2018年にソフトウエア企業Fanbase(ファンベース)を立ち上げた。「テレビの未来は個人にある」と彼はフォーブスに語った。Fanbaseは、コンテンツクリエイターを支援し、その影響力を活用し収益化しようとしている。
ヘイズは、間もなくメディア業界に転換点が訪れると考えている。かつては伝統的なテレビ局が支配的だったこの分野は、ネットフリックスなどのストリーミングを中心とした「ナローキャスティング」に移行したが、その次に来るのは、人々がSNSのパーソナリティやチャンネルをフォローするだけでなく、フィードやコンテンツを購読する「マイクロキャスティング」の時代だという。
「私たちはカルチャーと、そのインフラをひとつに統合しようとしている。現状では大手のプラットフォームとクリエイターの間に、略奪的な関係があるが、それを変えていきたい」とヘイズは言う。
ユナイテッドマスターズのスティーブ・スタウト最高経営責任者(CEO)は「ヒップホップはカルチャーをけん引しており、この分野のマーケティングはMTVやBETのような音楽ケーブルテレビチャンネルからSNSに置き換えられた。ラジオ局の役割はスポティファイとアップルミュージックが引き継いだ」と語る。
ヘイズはFanbaseの事業で、黒人のためのソーシャルメディアBlackPlanetの成功を再現しようとしている。BlackPlanetの運営元コミュニティコネクトは、2008年に3800万ドルでラジオワンに売却された。
ヘイズが20万ドルの自己資金で立ち上げたFanbaseは、これまで主にクラウドファンディングで1000万ドル以上を調達し、40万人以上のユーザーを抱えている。PitchBookは昨年3月に、Fanbaseの企業価値を5200万ドルと評価したが、ヘイズによれば、今では8500万ドル(約127億円)に上昇したという。Fanbaseは、購読料とユーザーのエンゲージメントに関連する取引で収益を得ているが、ヘイズによると黒字化はまだ達成していない。
同社は、メタやX(旧ツイッター)、TikTok、スナップチャットなどの既存の大手のSNSを競合に見据えている。
「SNSの核心にあるのは、子どもたちとブラックカルチャーのパワーだ。それがなければ、ソーシャルメディアは重要ではない」とヘイズは語った。
(forbes.com 原文)