一回の旅行でひとり100万円以上使うインバウンド富裕層はコロナ前には1%に過ぎなかったのに、消費額は11%を超えているため、彼らを誘客することが日本の観光産業の要であると認知しているからです。そして地方自治体も「ガストロノミーツーリズム」に力を入れ、インバウンドフーディーを呼び寄せようとしているのです。つまり、国を挙げて「食」で日本中を盛り上げようとしているわけです。
北陸新幹線沿線は、日本で最大級のワイナリー・ヴィンヤードの集積地
美食の聖地、富山県岩瀬地区
鈴木:軽井沢から福井までの北陸新幹線沿線は、70カ所近くのワイナリーやヴィンヤード(ワイン用ブドウ畑)が点在、日本で最大級のワイナリーやヴィンヤード集結エリアを形成、多くのワイン愛好家が訪れています。今まで寒すぎてブドウの生育には向かないと言われていた軽井沢でも、軽井沢初のワイナリーが誕生します。福井県でも3つ目のワイナリーが出来ると聞いております。ワイン愛好家はシャンパン愛好家でもあり、美食家です。北陸新幹線が福井まで延伸することにより、彼らを戦略的に誘客できれば、北陸新幹線美食観光経済圏(東京⇒軽井沢⇒長野⇒上越妙高⇒糸魚川⇒富山⇒金沢⇒福井)の可能性は飛躍的に高まると思いますがいかがでしょうか。
柏原:さきほど例に挙げた白馬や軽井沢、福井は、北陸新幹線の沿線と近郊にありますが、それは偶然ではないと私は思っています。北陸新幹線が金沢まで通じて一番発達したのは富山だと私は思っています。富山はかつて地元の人でも、金沢への通過地域だといっていたほどでしたし、新幹線が通ることで完全にスルーされると悲観していましたが、2015年の開業後3年間で30%観光客が増加しており、石川県よりも勝っています。それは富山の食の担い手たちが画期的な食文化をいくつも作ってきたことが大きい。たとえば富山駅から車で1時間半以上かかる豪雪地帯に作られたオーベルジュ「レヴォ」や、富山市近郊に富山中の名飲食店を移転させ、美食の聖地を作り上げた「岩瀬地区」の存在などです。
さらにいえば、それを支える富山湾の海の幸や、石灰岩や花崗岩に恵まれていることから北陸の地層や風土・水による食の豊かさが理解されてきたこともあります。海洋深層水がはぐくむホタルイカや立山の雪解け水を使ったコメのうまさもひとつです。最近は同じ富山湾に面する糸魚川も注目されてきました。糸魚川はユネスコが認定したジオパークであり、フォッサマグナに代表される貴重な地質、景観があり、それが岩ガキやホタルイカなどの魚介類にもいい影響を与えています。