南極の棚氷、4割超が25年で縮小 「回復の兆しなし」

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南極大陸を覆う氷床のうち海に張り出した「棚氷(たなごおり)」と呼ばれる部分の40%超が、過去25年間で縮小していることがわかった。欧米の研究者らが12日、米科学誌「サイエンス・アドバンシーズ」に研究結果を発表した。研究チームは回復の兆しもみられないと警鐘を鳴らしている。

1997年から2021年の間に、南極大陸の周囲にある162の棚氷のうち71は質量が減っていた。棚氷の減少は氷床システム全体に大きな影響をおよぼし、地球規模の海洋循環にも影響を与えるとみられるため、非常に懸念される事態だという。

25年間で質量が30%超減っている棚氷も48あった。地球温暖化による南極大陸の変化を示している可能性がある。

質量が減っている棚氷は南極大陸の西側に集中していた。東側では大半の棚氷で質量は横ばいか、むしろ増えていた。全体としてみると、西側での急速な減少の一部が東側での増加によって相殺されるかたちになっている。

研究チームは、大半の棚氷は「急速だが短期間の収縮のあと、ゆっくり再拡大していく」というサイクルを繰り返すと予想していたが、実際は半数近くが収縮し続け、回復の兆候もなかったという。

棚氷には、海へ向かう氷の流れを遅らせるという重要な役割がある。棚氷の縮小が起こる方法は2通りあり、1つは融解、もう1つは大きな塊が分離して海に落ちる崩壊だ。今回の研究で確認された棚氷減少の大半は融解によるものだった。

米カリフォルニア大学デービス校の解説によると、棚氷は常に融解しているが、近年そのペースが速くなっている。融解によって棚氷全体の崩壊もよく起こるようになっており、こうした崩壊は棚氷に流れ込む氷河の流れを加速させるため、海面上昇の間接的な原因になる。

また、氷河も減少しており、科学者らは海洋生態系に影響が広がるおそれがあると警告している。

米国立雪氷データセンター(NSIDC)によると、棚氷は藻類の繁殖地でもある。藻類はエビのような小さな生物の食べ物となり、こうした小さな生物はペンギンやアザラシ、クジラなどの餌になっている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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