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2023.10.10 13:30

「町長はマーケター」茨城県境町がふるさと納税で進化し続ける理由

「人工サーフィン場」移設秘話 投資家とコラボ

クレイ:今年4月にオープンした人工サーフィン場の「S-wave(エスウェーブ)」も企業版ふるさと納税が活用されていますが、これも町長が話を取ってきたのでしょうか?
 
橋本:いえ、「S-wave」のオープンはこちらから働きかけたのではなくて、言ってみればたまたまなんです。
 
少し経緯は長くなりますが、もともと2018年に東京・大井町で3年間の期間限定でオープンした「シティウェーブ東京」が閉鎖後の移設先を探していて、境町には人づてで話が来たんです。
 
それで「シティウェーブ東京」の投資家の方たちから話を聴きました。そのことを議会にかけて12人の町議全員で施設を視察してもらったところ、境町で受けてもいいのではという結論になったんです。最終的には、国の地方創生拠点整備交付金が取れるならやろうということで決めました。
2023年4月、境町にオープンした人工サーフィン場「S-wave」

2023年4月、境町にオープンした人工サーフィン場「S-wave」


実際には交付金が約1億4237万円、地方交付税約7118万円と企業版ふるさと納税の寄附約4346万円で実現しました。総事業費は約3億4790万円。施設は指定管理者の「大井町サーフィン合同会社」が運営するので、町は年間の家賃約400万円をいただくことになります。
 
自らいろんな人の話を聴いていくと、その中に面白いコラボができる可能性がある。「S-wave」で言うと、投資家の方たちが他の事業でも繋がりそうだったんです。境町はハワイ・ホノルル市と姉妹都市の関係ですが、そのホノルル市で行う境町のPR事業に投資家の方たちとコラボできそうで、次への広がりがあると感じたんですね。
 
クレイ:面白いですね。ひとつの話で終わらせずに投資家の方との話から、新しい価値を見出している。

“負動産”を作らない「境町モデル」



橋本:
境町はいま公共施設がどんどん建っています。ハコモノ行政のように映るかもしれませんが、問題なのは利益を生まないものを建てるからです。
 
私たちが考えているのは税金で維持管理をする“負動産”を作らないことです。国の補助金を活用して施設を建て、運営は利用する事業者に委託し施設利用料をいただく。投資したら回収する。民間企業と同じですが、それを「境町モデル」として取り組んでいます。
 
現在進行中のBMXやスケートボード、インラインスケートなどができる「アーバンスポーツパーク」の建設も、ワールドカップなどの世界大会誘致まで視野に入れています。この施設は東京五輪で使われた競技場が閉会後解体されて上海の倉庫にあると聞いて、それを買い取りました。天候に左右されずにプレーができるよう、パーク全域に屋根及び照明を整備し全天候化しています。
 
国際大会基準の施設があることで世界トップレベルの選手たちが利用してくれる機会も増えています。同時に、世界の都市と姉妹都市の関係を結ぶことで次の展開も考えています。

クレイ:都市間の関係から何が生まれるのでしょうか。
 
橋本:たとえばいま、フランスのモンペリエ市と友好都市協定締結に向けた取り組みを進めています。モンペリエはアーバンスポーツが盛んな都市で、ここと協力すれば将来ワールドカップができるかもしれない。
 
ハワイのホノルル市とは2018年9月に友好都市協定を締結し、2022年11月には姉妹都市協定を締結したのですが、ここから小中学生の留学プログラムが組まれています。日本未上陸のハワイの商品を「道の駅さかい」で売ることもできるし、「S-wave」を使ってサーフィンのワールドカップに関連したイベントも可能になりそうです。
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構成=児玉也一 写真=岡田清孝

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