SMALL GIANTS

2023.10.10 13:30

「町長はマーケター」茨城県境町がふるさと納税で進化し続ける理由

クレイ勇輝(左)と茨城県境町の橋本正裕町長

橋本:Yogiboから「うちの商品も返礼品で扱ってほしい」という依頼が来たんですね。本社は大阪ですが境町に工場があるものですから。
 
返礼品については、毎年夏に総務省からふるさと納税に関する資料が公表されますが、その資料で、よそではどんな品を扱っているか、寄付の受け入れ額がグッと上がった所は何をしたのか、漏らさず確認しています。
advertisement

クレイ:本当に、発想がマーケターですね。
 
橋本:そうです(笑)。よく「うちにはモノがない」とおっしゃる自治体がありますが、大事なのはモノじゃないんです。お米がない自治体はないし返礼品はいろんな切り口で考えることができるので、はじめはそういうところから入ってきてもらって、そのきっかけを活かせばいいんです。
 
寄付をしたら自治体から礼状が届いたという話はよく聞きますよね。境町ではどんな政策に使わせていただき、どんな結果を出したかという資料も付けています。そうすることで「自分のお金が役立った」と感じていただけてリピーターになる。実際、境町では7割の方がリピーターです。
 
ただ、返礼品が毎年同じだと寄付額は減っていくので、皆さんが何を望んでいるのか、どんな返礼品が喜ばれるかを常に考えています。だからマーケティングが欠かせないんです。
 
そうやって町のファンになってもらうことで、次は町に遊びに来ていただいたり、住んでもらえるような好循環が生まれると思うんです。

町長トップセールス 狙い目は、中小企業



クレイ:
この制度から町のサポーターが生まれそうですね。ではここから企業版ふるさと納税についてお伺いしていきます。
 
これまでの受け入れ額を見てみますと、2016年度は7700万円で全国1位でした。2017年度は1億3260万円。2018年度は3億490万円を集めて、いずれも全国3位。その後も毎年上位10位以内、関東では1位、2位の額を集めていますね。
 
企業版ふるさと納税は、個人版と違い返礼品がないのはもちろんですが、規模が大きな会社ほど逆に寄付へのハードルが上がる難しさがありますよね。
 
橋本:そうなんです。
 
クレイ:実は、ある企業で仕事のお手伝いをしていた時に、僕も企業版ふるさと納税の制度を随分勉強したんです。
 
大きな企業に寄付を募る難しさとは、経営者に寄付の意思があったとしても株主の考えは別だということです。たとえば、全国的に有名な自治体ならば話は早いかもしれませんが、地方の町や村となると「なぜそんな所に寄付するんだ」と株主から言われてしまうんですよね。
 
橋本:本当にその通りです。だから僕は経営判断が早い中小企業を中心に回っています。独自に用意した資料を使って寄付のメリットを説明させていただくトップセールスをしています。

僕が大事にしているのは、こちらの話だけでなく、企業側が抱えている課題にも耳を傾けることです。その話の中に、境町ならば実現可能なことが隠れていることがありますから。
次ページ > ハコモノ行政ではない。公共施設が続々誕生

構成=児玉也一 写真=岡田清孝

タグ:

連載

SGイノベーター【関東エリア】

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事


advertisement