新聞社のオーナーであり発行人であるエリック・メイヤー氏のオフィスと自宅に家宅捜索が入り、コンピューターや携帯電話などが複数差し押さえられた。
この捜索中に、発行人の98歳の母親(共同発行人)が死去しているが、警察によって過剰なそして不合理なストレスを与えられたものとして、発行人は抗議している。
言論の自由は、今日のアメリカで最も重要視される憲法の根幹となるもので、全米メディアは主義主張にかかわらず、このマリオン郡の警察を一斉に非難している。
無理筋な新聞社への家宅捜索
捜索された新聞「マリオン郡録・イン・カンザス」は、地元の政治家や行政に対して、積極的に賄賂などの不正行為を暴き出す報道をする姿勢で知られており、ことのおこりは、地元のレストランのオーナーとこの新聞社との争いから発していると伝えられている。それによれば、あるとき、このレストランが地元政治家の政治キャンペーンのイベントの会場となった。会場に、「文春砲」ならぬ「マリオン砲」がやってきたのを見つけたレストランのオーナーは、政治家に忖度して前述のメイヤー氏と新聞記者を会場から叩き出した。
その後、新聞社は、このレストランの女性オーナーの個人情報と運転記録を入手して、彼女の過去の飲酒運転の前科を暴こうとした。そのことを察知し、レストランのオーナーが不正な個人情報取得とプライバシーの侵害として警察に告訴したのだ。
そして、これが警察の無理筋な新聞社への家宅捜索につながった。
新聞社のメイヤー氏によると、警察の家宅捜査に際して記者の1人が指を怪我するということもあったとしており、警備カメラにも90分にも及ぶ家宅捜索で、従業員たちが慌ただしく退去させられている映像が残っている。
そして、時を同じくして、メイヤー氏の自宅も捜索され、コンピューターや携帯が差し押さえられ、そして不運にも老母が死去したという。
「マリオン砲」が扱おうとしていたのは、このレストランオーナーが飲酒運転で過去に有罪を受けており、免許が失効した後も運転していたことだった。
レストランのオーナーの個人情報については、違法に入手したものでないということを新聞社側は主張している。とはいえ新聞社は、情報元となった人間が違法に入手した可能性もあるとして、実はそれまでそのニュースの報道を差し控えていたという経緯もあった。
家宅捜索で最も重要な手続きは、裁判所が捜索令状を出すことであることはいうまでもないが、本件では、裁判所の家宅捜索令状が出ていなかったのだ。
これに対してマリオン郡の警察署長は、現在進行形で法令違反が行われているときには、捜索なしでも家屋に入り込むことができると弁解している。