「骨砕き」で顔を整形 危険な美容法、TikTokで広まる

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ハンマーで自分の顔を殴るべきかと聞かれれば、答えは普通「ノー」だ。だがなんと、一部のTikTokユーザーは、端正な顔立ちを得るために自分の顔を殴っているようだ。

美を追求してハンマーやボトル、マッサージ器、その他の鈍器で自分の顔を叩く行為は「ボーン・スマッシング(骨砕き)」と呼ばれている。「bone smashing tutorial」で検索すると、一連のTikTok動画の総再生回数は2億6000万回を超える。だが、一部のTikTokユーザーや骨砕きを勧める人が何と言おうとも、顔の骨を砕く行為に効果がある証拠はないことを覚えておいてほしい。もちろん、痛い思いをしたり、顔にダメージを加えたりするのが目的でなければの話だが。

自分の顔を叩く行為を推奨する人たちは「ウォルフの法則」と呼ばれるものを拠り所としているようだ。これは、1800年代にドイツの解剖学者で外科医のユリウス・ウォルフが考案したものだ。

この法則は、人や骨は人形のようなものではないという考えに基づいている。骨は完全に無生物の構造体ではなく、古くなったりダメージを受けたりしたものは絶えず吸収され、新しい骨に置き換わるという「骨代謝」が行われている。骨に機械的な力や物理的な刺激を加えると、代謝が促進され、結果的に骨が強く太くなる。逆に、力や刺激が加わらなければ骨は細く、もろくなる。このため、身体活動、特に体重負荷運動をすると骨の強度を維持し、骨粗しょうを防ぐことができる。

これに基づき、鈍器で顔の骨を折ることで顔の形を変えられる、というのが、「骨砕き」の主張だ。いわゆる「彫りの深い」顔を手に入れる方法として宣伝されている。骨を一度壊して回復させることで強化できるのであれば、自分の顔をイースター島のモアイ像のように彫りこめばよいのではないか──という考えだ。

だが、ウォルフの法則が特定の機械的な刺激について当てはまるからといって、骨を叩いて壊してよいことにはならない。適切な方法でウォーキングやウェイトリフティングをしたときに骨にかかる力と、鈍器で殴って加わる力には大きな違いがある。後者は深刻な骨折を引き起こす可能性がある。

確かに、骨は折れても治るかもしれないが、必ずしも正しい形に治るとは限らない。人は氷の彫刻ではない。自分の顔を望む形に彫ることはできない。ハンマーで顔の骨を砕いてしまうと、今の自分の外見をどう思うかにかかわらず、骨が変形して見た目がさらに悪くなってしまう可能性がある。

加えて、顔は骨だけでできているわけではない。さまざまな軟部組織や結合組織、眼球など、回復不能な損傷が生じ得るものも含まれている。鈍器で顔を叩けば出血し、感染症を起こすリスクが高まる可能性もある。

さらに、ウォルフの法則は、骨の働きを極端に単純化したものだ。骨の密度や強度に寄与するのは機械的な刺激だけではない。栄養状態や、副甲状腺ホルモンをはじめとするさまざまなホルモンのレベルなど、他の要因も重要な役割を果たす。顔を崩すためには、バーベルを顔にくくりつけるような体重負荷運動をする必要があるが、それはお勧めできない。

もしあなたが自分の外見に満足していないのなら、顔を叩くのは良い考えではない。特にハンマーではやめておいた方がいい。自信をつける方法はたくさんある。顔を痛めつけたり、取り返しのつかないことになり得るダメージを与えることは、解決策ではない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

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