映画

2023.09.29 12:15

K・ブランシェットこだわりの映画「バーナデット ママは行方不明」 4年越しに日本で公開

ケイト・プランシェットが演じる主人公バーナデットは、将来を嘱望された天才建築家だったが、20年前に突然引退していた 映画「バーナデット ママは行方不明」より(c)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved


ケイト・ブランシェットは、これまで作品に合わせてさながらカメレオンのようにさまざま役柄を演じてきた。
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1969年にオーストラリアのメルボルンで生まれた彼女は、オーストラリア国立演劇学院を卒業後、舞台で活躍。映画では1998年に「エリザベス」でエリザベス1世を演じてゴールデングローブ賞の主演女優賞(ドラマ部門)に輝く。

レオナルド・ディカプリオ主演の「アビエイター」(マーティン・スコセッシ監督、2004年)では女優のキャサリン・ヘプバーン役でアカデミー賞助演女優賞を受賞。またウディ・アレン監督の「ブルージャスミン」(2013年)では結婚生活が破綻して妹のもとに身を寄せる女性を演じてアカデミー賞主演女優賞を獲得する。

そのほか2001年からの「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズでは重要な役どころであるガラドリエル役で登場、異色なところでは「アイム・ノット・ゼア」(2007年)で男性であるボブ・ディランを演じている。また今年5月に日本公開された「TAR/ター」での、絶対的な力を持ってオーケストラを支配する女性指揮者役では鮮烈な印象も残した。
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「バーナデット ママは行方不明」での演技でも多彩な顔を見せ、精神的に不安定な主人公を見事に演じ分けている。

また作品そのものに対するこだわりにも堅固なものがあり、本来、南極の場面はスタジオでの特殊撮影で済ませるはずったのだが、「海と氷山は本物であるべきだ」という彼女の主張で、グリーンランドでのロケを敢行したという(さすがに南極までは出かけなかった)。

それだけに冒頭と終盤で現れる、主人公のバーナデットが1人乗りのカヌーで氷山の間を漕いでいくシーンはなかなかの迫力があり、見どころの1つとなっている。主人公の決然とした意志を表す場面でもあるのだが、やはり現場での演技でしか表現できないリアリティを感じさせる。
旅が苦手のバーナデットが選んだ場所は 映画「バーナデット ママは行方不明」は、2023年9月22日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開(c)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved

映画「バーナデット ママは行方不明」には、世界でも指折りの実力派俳優ケイト・ブランシェットの深い思いが込められているのだ。

ところで実は、この作品、アメリカでは2019年8月に公開されている。それから4年も経っての日本での劇場上映だ。

それにはその後撮影された「TAR/ター」での圧倒的な演技が与しているのかもしれない。筆者としてもこの作品が埋もれることなく、きちんと日本でも公開されたことはとても喜ばしい。

連載 : シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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