映画

2023.09.29 12:15

K・ブランシェットこだわりの映画「バーナデット ママは行方不明」 4年越しに日本で公開


「バーナデット ママは行方不明」の原作は、2012年にアメリカで出版されたマリア・センプルの小説「Where'd You Go, Bernadette」(邦題「バーナデットをさがせ!」)。刊行されるや話題となり、「ニューヨーク・タイムズ」の年間ベストセラーに選出される。また全米図書館協会の賞にも選ばれ、現在は30カ国で翻訳出版されている。

当然、映画界もベストセラーには敏感で、翌年、アンナプルナ・ピクチャーズとカラー・フォースが映画化権を獲得。その後、監督として「6才のボクが、大人になるまで。」(2014年)でアカデミー賞にノミネートされたリチャード・リンクレイターに白羽の矢が立てられた。

「天才でありながら、自分の創造性から遠ざかっている女性を重層的に描いている。バーナデットだけでなく、周りのキャラクターたちも多彩で素晴らしい。同時に、長期間にわたる人間関係にも見事に目配せされていて、とにかくこの世界に引き込まれた」

オファーを受けたリンクレイター監督は原作の魅力をこう語るが、もう1人、この原作に強く惹きつけられた人物がいた。

ブランシェットの作品へのこだわり

「人生に大きな変化が訪れようとしている女性を、とても面白く描いている」と原作について語るのは、アカデミー賞に2度輝いているケイト・ブランシェットだ。強烈であり複雑な内面を持つ主人公のバーナデットに惚れ込んだ彼女は、自らこの役を演じたいと申し出たのだそうだ。

「私がバーナデットにもっとも共感したのは、自分からは逃れられないというところ。年齢を重ねると特にそうだけれど、先に進むには過去と向き合わなければいけない、自分に責任を持たなければいけない」

原作に深い思い入れを抱いていた彼女は、撮影が始まる前、わざわざシアトルに住む原作者のマリア・センプルに会いに出かけた。そこでセンプルから彼女が10年間愛用していたサングラスをプレゼントされたという。

ちなみに、センプルが見学のために撮影現場に出かけたとき、ブランシェットはそのサングラスを実際にかけて、バーナテッドという主人公になりきっていたそうだ。それほどブランシェットのこの役に対する思い入れは強かったのだろう。
人間嫌いのバーナデットは、外出の際にはサングラスをかける(c)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved
次ページ > カメレオン俳優の演技にも注目

文=稲垣伸寿

ForbesBrandVoice

人気記事