地球以外の場所に生命が実際に存在するなら、まさにそこにいるかもしれない。だが、エウロパの海の化学的性質と、その表面の氷がどこから来るかは、これまで明らかになっていない。この2点が密接に関連していることを示唆する最新の研究結果がこのほど、独立した2つの研究チームから発表された。どちらのチームも、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)に搭載の近赤外線カメラ(NIRCam)の近赤外線観測データを用いている。
供給源を見つける
科学誌Scienceに22日付けで掲載された、今回の研究をまとめた論文では、エウロパにある二酸化炭素の氷をJWSTで観測したデータを利用している。二酸化炭素は過去にエウロパ表面で検出されていたが、小惑星や隕石(いんせき)の衝突によって持ち込まれた可能性があると考えられていた。あるいは、巨大惑星の木星を取り巻く広大な磁場環境とエウロパとの相互作用による生成物の可能性も考えられた。エウロパの二酸化炭素の供給源を突き止めることが重要なのは、内部にある海の化学的性質と、海が生命を維持できる可能性があるかどうかを、科学者らが知ることができるからだ。
タラ地域にようこそ
サマンサ・トランボとマイケル・ブラウンの研究チームは今回の論文で、2022年11月に取得したJWSTの観測データを使用し、エウロパ全体の二酸化炭素の分布図を作成した。その結果、タラ地域にある二酸化炭素の豊富な供給源が見つかった。この地域は、地質的に混沌とした状態で、2019年には科学者らがここで塩化ナトリウム(塩)を発見していた。地質学的に若いこの地域の二酸化炭素は、エウロパの内部からもたらされていると、チームは主張している。JWSTの同じデータを用いたヘロニモ・ビシャヌエバのチームによる別の研究でも、タラ地域で(他の化合物との混合状態ではあるが)二酸化炭素の濃度が高い領域を発見しており、この場合もやはり、衛星内部から供給されていると説明している。