これら3つの要素はすべて、中国のEVが欧州市場に登場し、欧州の自動車メーカーに影響を与えかねないと政策立案者らの間で警戒感が高まっていることと一体となっている。
実際、イタリアが中国の「一帯一路」構想から離脱する方針を示し、ドイツの自動車メーカーにとって中国が最大の輸出先である現状では、こうした展開は中国の台頭に対する欧州連合(EU)の不信感がさらに募る可能性がある。
欧州委員会の対応
欧州委員会(EC)はEVのダンピング(不当廉売)調査ですぐさま中国に警告を発するという、多くの人が考えていた以上にすばやい行動に出た。このような調査が実施されるには、主にドイツが神経をとがらせているため時間がかかり、以前行われた中国製ソーラーパネルに対する調査と同様、頓挫すると考えるのが妥当だ。だが、少なくとも言葉の応酬は激しくなっている。中国は、EC委員長が中国のEVメーカーに対する調査を行う方針を表明したことに怒りをあらわにし、そしていま、訪米中に習近平国家主席を「独裁者」と呼んだドイツのアナレーナ・ベアボック外相に怒りの矛先を向けている。加えて、フランスの環境連帯移行省は、EV購入のための政府補助金がアジアメーカーのEVのほとんどに適用されないよう再調整する予定だ。また、ドイツ連邦銀行(中央銀行)は奇妙にも、ドイツの産業界に中国に絡むリスクを排除する必要性を警告している。
全体として、欧州の姿勢は大半の人が当初考えていたよりも強硬的だ。中国による企業スパイのさらなる証拠が見つかったこと、G20サミットでの中国の関与の欠如、そして臆面もないロシアとの関係によって欧州の姿勢が硬化した面もある。欧州の主な弱点はドイツの自動車メーカーで、例えばフォルクスワーゲンの中国における市場シェアは13%だ。そうした自動車メーカーに対する関税などの報復措置や、リチウムなど電池材料の供給制限は中国が取りうる措置だろう。
(forbes.com 原文)