事業継承

2023.09.14 16:30

コミュニティの「承継問題」 引き継ぎ先に求めた3つの条件

引き継ぎ方法と得られた成果

同年10月からスタートする「渋谷をつなげる30人」第7期の引き継ぎの方針について「1年後には自身がいなくてもすべてが回る体制をつくるため、全業務にOJTしながら伴走を行う」と設定した。

そのために自身が担っていたタスク(企画・営業・運営・発信など)を細分化し、それらをチームで担う事で負荷分散を図った。

事務局の中心には、SCFCから畑間直英氏(5期生)を配置し、営業にはスポンサー担当の酒井翼取締役を中心にしつつ、小泉翔代表取締役が適宜サポートを行った。

また、特に専門性と経験が必要となるファシリテーターには、OBでもある株式会社イースマイリー矢澤修氏を招き、体制を盤石にしていった。

営業は既存のSCFCスポンサーを中心に行うことで、メンバーのリフレッシュを図る。(当然、スポンサーでなくても「つなげる30人」には参加できるが、最終的にスポンサーになってもらえるようチームを好きになっていただく狙い。)

現在、SCFCのオフィスで「つなげる30人」は、実施されている。

結果的に引き継ぎは成功し、プログラム最終日の私の役割は全く無く、一見学者として座るだけで良くなり、あえて最後の打ち上げにも顔を出すことは控えたくらいだ。

SCFCとの振り返りの際でも「想像以上に、スポンサー同士のつながりができ、チームとスポンサーのつながりも強固になった」「応援してくれる人、ゲームに観に来たいと言ってくれる人が増えた実感がある。クラブがより街のものになったと感じる」など、ポジティブなフィードバックが多く、SCFCが街のイノベーターをつなげていくハブになっていく未来が想像できた。

なお2023年9月から「渋谷をつなげる30人」第8期がスタートしようとしているが、この準備にも軽い助言などはするが、ほとんどノータッチで進めることが出来ている。

「街のステークホルダーをつなげる」スポーツの可能性

今後、様々なエリアでも「つなげる30人」を続ける中で、コミュニティの承継問題に直面することが出てくるだろう。これまでも先進的な取り組みを手がけてきた渋谷から、この引き継ぎの事例が各エリアの参考になれば、という思いでいる。

今回は、たまたま「ローカルスポーツチーム」が引き継ぎ先として選定され、結果的に相性が良かったが、他にも「地元の金融機関(地銀や信用金庫)」「大学を含む教育機関」「行政の外郭団体」など多くの可能性があると考えられ、もっと検証し、事例を増やしていきたい。

今年4月には「ナゴヤをつなげる30人」からのご縁で愛知学院大学の内藤正和准教授からお誘いを受け、「日本体育・スポーツ政策学会関西セミナー」で「スポーツを通じた街の課題解決に関する考察」というお題で講演した。

この場で私は、SCFCの事例を引き合いにして「まちづくりにおけるスポーツの新しい役割の可能性」について以下のような趣旨を提言した。

・従来の「スポーツで地域を良くする」というスポーツを主語にした考えに縛られなくても良いのではないか。

・スポーツの可能性は「街のステークホルダーをつなげる」事であり、それを通じて「街を良くするプロジェクト」を生み出すプラットフォームになる事もある。

・つまりスポーツ主体から、スポーツがハブになることで、それが結果的に、スポーツ非当事者を巻き込んでいくことになるのではないか。

このように引き継ぎを通じて、新しい地域におけるスポーツの役割についても踏み込んで考察し、知見を紡げたことは、私にとっても有意義であった。

文・写真=加生 健太朗

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