トルコの研究チームが発表した論文によると、精液1ml当たりの精子の数は、ニコチンにさらされなかったラットで平均9850万個だったのに対し、電子たばこの煙にさらわれたラットでは平均9510万個だった。
さらに、たばこや電子たばこの煙にさらされたラットの一部には、精細管の「乱れ」が生じていた。精細管とは精子を作る睾丸の中にある管で、これが乱れると、精子の生産と質に悪影響を及ぼす可能性がある。このほか、生殖細胞とセルトリ細胞の分離や、空洞の形成、壊死、繊維症が生じていたマウスもいたという。
ラットを電子たばこの煙にさらす実験は過去の研究でも行われており、死滅精子の増加や、精子を生み出す組織の変化、精巣重量の減少、組織の損傷を示す酵素の増加、精子産生に重要な役割を果たす酵素の阻害につながる可能性が示されている。また、電子たばこの煙にさらされたラットの精子はDNA損傷と異常な構造が増えるとの研究結果もある。
自分はラットではないので、これらの研究結果は当てはまらないと主張する人もいるかもしれない。確かに、ヒトにも同様の影響が生じたことを示した研究結果は今のところない。ラットと同じ研究をヒトに対して行うのはずっと難しいからだ。人間に対して「この電子たばこの煙を吸い続けてもらった後、睾丸を取り出して、どれだけの乱れが生じたか見させてください」とは言えない。
しかし、2020年に学術誌Human Reproductionに発表された研究結果によると、電子たばこを日常的に使用している男性の平均総精子数は9100万個だったのに対し、電子たばこをまったく使用していない人の平均総精子数は1億4700万個だった。また、筆者は2021年12月の記事で、電子たばこにより勃起不全(ED)のリスクの2倍以上増加することを示した研究結果を紹介している。
こうした研究結果は、さほど驚くべきものではない。電子たばこの煙にはニコチン、香料、ホルムアルデヒドや、カドミウム、銅、鉛などの重金属化合物といった、睾丸に有害な影響を与え得るさまざまな物質が含まれている。
(forbes.com 原文)