経済

2023.09.11

1ドル150円も視野に 円安加速でも好調、ラーメン「一風堂」の底力

9月6日のドル円相場は1ドル=147円81銭前後と、大幅なドル高・円安で推移しています。アメリカの利上げはあと1回ほどで終わる見通しでしたが、サウジアラビアが原油の減産を続ける報道を受け、アメリカの金融政策を左右するのでは、との思惑が働いています。

原油価格は10カ月ぶりに一時、1バレル=88ドル台まで上昇し、今年の最高値を更新しています。アメリカは車社会であり、国内の物価上昇に歯止めがかからなければ、利上げの回数や利上げの期間が伸びる可能性があります。つまり、米国の金利高=ドル買い=ドル高=円安です。

アメリカの消費者物価指数は3%台まで低下し、雇用統計の数字も軟調になってきたことから、そろそろ「ソフトランディング(景気の軟着陸)」できるのではと期待が高まっていたタイミングでの減産報道です。

為替介入の準備運動

財務省の神田真人財務官は6日、円安進行について「急激な変動が起こっている」と述べ、口先介入を行っています。「こういった動きが続くようであれば、政府としてはあらゆる選択肢を排除せずに適切に対応していきたい」と市場をけん制しました。

日本は、長期金利の上限を引き上げながらも、円高に推移させることなく、日経平均も崩れずにうまくキープしているといったところ。そして、アメリカのソフトランディングが確実になれば、放っておいても少なからず「円高に推移」することが予想できました。

しかし今回の減産延長で円安が加速。150円に向かうなかで、財務省は口先介入をしながら、円安が加速すればいつでも為替介入ができる準備を整えています。為替介入は効果が数日で吸収されてしまうものの、過度な円安は輸入物価の上昇につながり、150円を超える水準では介入を迫られることが予想されます。

国内の個人消費に限界も

いまのところ、円安は製造業への恩恵が大きいことから日経平均は上昇しています。自動車産業や日立製作所などを含め、株価には好材料が揃っているとの見方です。ただ、個人消費はそろそろ、輸入品を中心とした値上げに耐えかねてくる時期です。国内の値上げ品目数が少なくなっていることからも、価格転嫁に個人消費がついていけない状態になっていることがわかります。

円安が加速すれば、「悪い円安」「コストアップ」「値上げ」の論調が増えて、個人は節約モードになりかねません。実際に、物価上昇の要因は「食品」であるため、消費者物価指数が3%台だと言われても、実際の生活では9%くらい上昇している肌感覚でしょう。

日本がデフレから脱却できそうな兆しはうっすらと先に見えてきました。ただ、それはいつ幻想郷に終わってしまうかもしれないという危うさを持っています……。そんななか、取材を通して知った力強い業界がラーメン業界です。値上げをしても、なお客を引き付けているのがこの業界。味の追求、メニューの改変、店舗戦略、さまざまな切り口で攻めている企業が多くあります。海外に出店している「一風堂」を手掛ける力の源ホールディングスは、国内店舗に比べて海外店舗の利益率は2倍以上です。

デフレでコストカットの工夫をしてきたノウハウを海外展開すれば、値上げができる海外で利益率が高まるのは当然の結果です。そうした、工夫を続けている日本企業から学ぶことは数多くありそうです。

文=馬渕磨理子 編集=露原直人

ForbesBrandVoice

人気記事