すべてのキャンセル品を救えるわけではない
PHOENIX LAB.PROJECTが目指すのは、バングラデシュの労働者を救うこと。行き場のなくなった製品を現地の工場で加工し、新たな商品として販売することで、キャンセル品の減少と新たな雇用の創出につなげる計画だ。久保がブランドディレクション、ウィファブリックが販売、わんピースが現地工場のハンドリングをそれぞれ担当する。
久保と福屋は実際にバングラデシュを訪れ、縫製工場の経営者や労働者へのヒアリングも行った。
「工場に発注が入り、それによって雇用が生まれることが一番助かるという話でした。このプロジェクトだけですべてのキャンセル品や労働者を救えるわけではないですが、まずは動くことが大事なので、できることからやっていきたい」(福屋)
「すべてのキャンセル品を救えるわけではない」という言葉の通り、世界中のアパレル企業から発注された製品は、デザインも数量もバラバラ。そこから今回のプロジェクトに適した製品を選ぶのも一苦労だった。事前に工場側である程度絞り込んでもらったうえで、久保が吟味した。
「キャンセル品はきちんと管理されていないので、生地不良などでB品判定されるものも仕分けされていません。このプロジェクトでは、着用に大きな影響のない生地不良や汚れは『味』として生かすことも考えています」(福屋)
高度な職人技の価値を知ってほしい
9月15日に発表する第一弾コレクションでは、ユニセックスで着られる20以上のアイテムを展開予定だ。元々は大量生産品として企画されたデニムパンツやジャケット、ベストなどが、バングラデシュの伝統的な刺繍が施されることで、独特の風合いを持つ一点物に生まれ変わっている。「生地の状態にバラすのではなく、製品化されたアイテムにそのまま刺繍を施しました。高い技術が必要な作業ですが、バングラデシュの職人さんたちは応えてくださいました。ただ、彼ら・彼女らは自分たちを職人だとは思っていないんです。このプロジェクトを通じて、その職人技のすごさを消費者に伝えたいですし、職人さんたちにも自分たちの仕事の価値に気付いてもらいたいです」(久保)
アイテムの多くは1万円台、安いものは1万円以下で購入できる。ヨシオクボは2万円以上のアイテムが多く、コアユーザーは30〜40代。手に届きやすい価格で、下の世代にも興味を持ってもらいたいという想いも込めている。
バングラデシュの縫製工場に眠るキャンセル品は、まだまだ尽きない。本プロジェクトでは、11月以降に関東圏でポップアップを展開するほか、第2弾以降のコレクションも発表する予定だ。