国内

2023.09.19 08:30

日本のAI第一人者が教える「取るべき戦略は3つのステップだけ」

PKSHA Technology代表取締役の上野山勝也(左)と東京大学大学院教授、「AI戦略会議」座長の松尾豊(右)

松尾:その通り。自分が動こうと思って問わなくてはダメです。そうではないと、具体的な技術の話にならない。本気でアクションしようとすれば、技術の話だって目に入ってきます。一般論ではない「今日から『自分』は何をつくればいいんでしょう?」という質問をされると僕はすごくうれしいし、力になってあげたい気になります。松尾研究室のメンバーもそんなメンタリティをもっている人が多いから、それぞれ活躍するのだと思います。
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上野山:課題を「自分ごと」ととらえるようになれば、個人も、企業も、社会も、それぞれのレイヤーで変わっていくでしょう。例えば、リクルートには「結局、お前はどうしたいのか?」と問う文化がある。個人の行動に落とし込んで「どうしたいか」というWillを聞くサイクルを無限に繰り返す。すると、いやでも「自分ごと化」します。これも組織を支配しているアルゴリズムのひとつですが、それがよくできているからこそ企業が進化し続けているんですよ。

松尾:他人に「勝ち筋」なんて聞いているうちはダメなんだと思いますね。これまでそんなものがあったためしはなかったし、そういう「銀の弾丸」や「青い鳥」がどこかにあるんじゃないかと探す姿勢がナンセンスなのだと思います。繰り返しますが、ハイサイクルに試行錯誤して、いいものにアクセルを踏む。悪いものはやめる。そうして、指数的な成長を黙々と続けていくしかない。そうしているうちに、次の大きな成長のチャンスが見えてくる。

そこでまた、試行錯誤を増やす。そうして変化をいとわずにやっていけば絶対にチャンスがあるし、伸びていくんですよ。私たちが取るべき「戦略」は、実はごくシンプルだと思います。
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上野山勝也◎PKSHA(パークシャ)Technology代表取締役。1982年生まれ。ボストン コンサルティング グループ、グリー・インターナショナルを経て、東京大学松尾研究室で博士取得後、2012年創業。未来のソフトウエアの研究開発と社会実装をライフワークとし、人と共進化/対話をする多様なAIアシスタントを累計約2600社に導入。

松尾豊◎東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻教授。1975年生まれ。専門は人工知能、深層学習、ウェブマイニング。スタンフォード大学客員研究員などを経て2019年より現職。日本ディープラーニング協会理事長、ソフトバンクグループ社外取締役、内閣府「AI戦略会議」座長などを務める。

文=神吉弘邦 イラストレーション=オリアナ・フェンウィック

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