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2023.09.17 11:30

ミツバチxAIxロボティクス。ハチを使って食料安全保障

Beewiseの創業メンバー。左から2人目がプロ養蜂家のイリヤ・ ラドジナーで、中央がCEOを務めるサール・サフラ。ラドジナーの養蜂に関する知識と経験と、エンジニアで連続起業家のサフラのスキルや経営術が役立っている。

ハードウェアよりも「プラットフォーム」

一般的な養蜂箱には、正六角形のセル(巣穴)約6000からなるフレーム(木枠)が10入っており、全体は6万ほどのセルで構成されている。ミツバチはここに卵を産んで幼虫を育て、ハチミツを蓄える。シンプルで使い勝手がよい構造であり、だからこそ、150年以上も使われてきた。
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BeeHomeは既存の木箱の仕組みを踏襲しているが、18万のセルからなる30フレームに変えて容量を拡張した。当然ながら、ハチミツの収穫量も大幅に増えることになる。それでもBeeHomeの特性は、ハードウェアそのものや容量よりも、「プラットフォーム」のほうにある。低価格の既成品を組み合わせて、そのうえに彼らが開発したソフトウェア・プラットフォームを構築した。それで十分なのだ。

目的はあくまで養蜂家の負担を減らしつつ、24時間365日、ミツバチを守ること。そのために、目や頭脳、手といった人間の能力を“拡張”し、決して疲れることなく仕事を肩代わりできるコンピュータ・ビジョンとAI、ロボットを使っている。プラットフォームの利点のひとつは、改善し続けられることだ。

それにモバイルアプリを使えば遠隔地からでも、ダッシュボード上で確認するだけで、ミツバチの異変に対してすぐに手が打てる。
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BeeHomeの貯蔵タンクには1台あたり5t近くのハチミツがためられ、 利用者は隔週で回収を行う必要がある。

BeeHomeの貯蔵タンクには1台あたり5t近くのハチミツがためられ、 利用者は隔週で回収を行う必要がある。


近年、世界的にミツバチの養蜂箱の数は増えており、BeeHomeへの関心も高まっている。コロナ禍で食料自給率など「食の安全保障」への危機意識が高まるなか、シンガポールやUAEの投資家からの出資が増えている。ミツバチが食物連鎖で重要な役割を果たしていると、気づく人が増えているのだ。

それでも、サフラは「ミツバチを救うためにビジネスをしているわけではない」と断言する。「株主やステークホルダーに利益を還元できる会社に育てようとしているのです。でも、その過程でミツバチを救えるかもしれない─。それなら、最高にうれしいですよね」

ビーワイズ◎2018年創業、イスラエルのAIロボティクス企業。CEOはサール・サフラ。AI×コンピュータ・ビジョン×ロボティクスでミツバチの養蜂箱を刷新。アプリを使って温度管理や投薬ができるプラットフォームを構築した。22年3月には、インサイト・パートナーズが主導したラウンドで8000万ドルを調達。累計で1億2000万ドルの資金を調達している。

文=井関庸介 写真提供=ビーワイズ

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