北米

2023.08.31 14:30

米国の銃撃事件、今年すでに500人以上が死亡 過去10年で最多

遠藤宗生
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米フロリダ州ジャクソンビルで、人種差別的な動機による銃撃事件で3人が死亡した雑貨店の近くで犠牲者を追悼する人々(Sean Rayford/Getty Images)

米国では今年に入り、銃撃事件ですでに500人以上が死亡したことが、米非営利団体「ガン・バイオレンス・アーカイブ(GVA)」のデータから明らかになった。8月末までの死者数としては、少なくとも過去10年間で最多。今月は、フロリダ州ジャクソンビル、ケンタッキー州ルイビル、マサチューセッツ州ボストン、ワシントン州シアトルなどで事件が相次いだ。

GVAは、銃撃により加害者を除く4人以上が死傷した事件を「大量銃撃事件(mass shooting)」と定義し、2013年からデータを記録している。GVAによると、今年1月1日から8月29日までの発生件数は476件で、死者数は508人となった。昨年の同時点における死者数は434人、2021年は449人、2020年は321人で、今年はそのいずれをも上回り、2019年の266人からはほぼ倍増した。

また、殺人、防衛目的または意図的でない発砲、自殺を含め、銃が使われた事件・事故による負傷者数は、今年に入って2万5000人を超えている。GVAの定義に含まれない事例を合わせると、今月29日までに銃が絡んだ事件・事故で死亡した人は2万8535人に上る。内訳は、1万5906人が自殺、1万2629人が殺人・正当防衛・事故で、うち201人は12歳未満、981人は12~17歳の未成年だ。

ジョー・バイデン大統領は今年3月、相次ぐ銃乱射事件を受けて新たな銃規制策を発表。銃器を売買する際の身元確認を強化する大統領令を出したほか、免許を取り消された業者が銃器を販売できないようにする仕組みの策定を司法長官に指示した。

大統領はこれに先立ち、昨年6月に超党派の銃規制法案「Bipartisan Safer Communities Act(超党派のより安全な地域社会法案)」に署名。ドメスティックバイオレンス(DV)の加害者への銃販売を禁止して「ボーイフレンドの抜け穴」と呼ばれる法律の穴をふさぐなど、銃規制強化を進めてきた。

今年3月の大統領令は、カリフォルニア州モントレーパークのダンスホールで11人が死亡した銃乱射や、同州ハーフムーンベイで7人が死亡した2件の銃撃など、相次ぐ事件を受けて発表されたものだが、その後も銃犯罪は後を絶たない。7月4日の独立記念日にかけての数日間には17件もの銃撃事件が発生し、ルイジアナ州シュリーブポートでは4人が死亡、6人が負傷した。今月初めにはオハイオ州ハートビルで4人が死亡し、オクラホマ州オクラホマシティーでも4人が死亡した。

フロリダ州ジャクソンビルでは先週、マーティン・ルーサー・キング牧師が「私には夢がある」と演説し人種差別撤廃を求めて率いた「ワシントン大行進」から60周年の記念日に、男が雑貨店ダラーゼネラルで発砲し、黒人3人を殺害した。警察は、人種差別的な動機に基づく襲撃だとみている。

米議会では近年、民主党主導の銃規制法案が次々と可決されている一方、昨年下院を通過後に上院で否決された殺傷力の強い武器の所持禁止法案など、共和党の猛反発で頓挫した規制案もある。バイデン大統領は3月にテネシー州ナッシュビルの小学校で起きた銃乱射事件を受けて、改めて同法案の可決を呼びかけたが、共和党が多数を占める現在の下院では法案成立の見込みは薄い。一部の共和党議員は代案として、増加する銃暴力に対抗することを目的にメンタルヘルスに焦点を当てた法案を推進している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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