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2023.08.31 11:45

睡眠解析で上場のエコナビスタ 解約率0.02%の製品を生み出せる理由

同社では従業員の約3割が、カスタマーサクセスに従事する。

「彼らのなかには介護福祉士の資格を保有していたり、介護現場の経験者もいます。私が入社した2017年当時、施設のマネジメント層は人手不足を喫緊の課題として認識し、改善のためにシステム導入を決めてくれました。しかし現場では『介護は人の手でやるもの』と反発の声が多かった。そこを現場を知るカスタマーサクセスが寄り添うことで徐々に理解をしてもらえるようになりました」

そのうえで、現場の声をいち早く社内に共有し、改善につなげていく体制もあった。それが「ハドルミーティング」だ。これはエコナビスタで行われている、社長、役員、部長、担当者が参加する会議体のことを指す。営業、カスタマーサクセス、経営企画・管理、開発といったそれぞれ部署で、毎日30分間、現場の実情や顧客ニーズの報告と、それに伴う意思決定が下される。

エコナビスタの社員はわずか33人。上場企業ではかなり少ないが、「少人数で経営できているのも、ハドルミーティングによって権限移譲が進み、全員が当事者認識を持って顧客の為に働けているから」と渡邉は話す。

改善を繰り返した結果、現在では年間解約率が0.02%にとどまる。「ライフリズムナビ+Dr.」は介護現場に着実に浸透してきている。

在宅向け事業にも参入

エコナビスタは一般家庭向けの見守りサービスにも乗り出している。2018年9月に、睡眠・疲労回復などの健康サポートサービスの共同開発を目指して、東京ガスと資本業務提携契約を締結した。

「実は介護施設に入れる高齢者は一握り。在宅向けサービスのニーズの方が大きいんです。いずれ一般家庭向けの事業に舵を切らなければいけないと考えていていました」



そして2021年2月に東京ガスと一般家庭向け見守りサービス「ライフリズムナビ+HOME」をリリース。これまでの高齢者施設向け事業で培ったノウハウを在宅介護領域に応用した。

2022年3月には新型スリープセンサーも発表した。マットレスの下に設置するだけで、離床や体の動きを検知するほか、睡眠解析や心拍測定などができる。性能が向上した同センサーを加えることで、着実に実績を積み上げてきた。

少子高齢化が進む日本では、2050年には総人口が1億人を下回り、3人に1人以上が高齢者になるという予測もある。渡邉は最後に、超高齢社会や労働者不足といった差し迫った問題に向けて熱意を明かした。

「エコナビスタは、日本が直面する社会課題に立ち向かっています。まずは、国内の介護施設約220万室のうち、シェア15%の獲得を目指して『ライフリズムナビ』をさらに進化させていきたい」

取材・編集=露原直人 文=小谷紘友 撮影=曽川拓哉

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