自らを“芸人”と自称しないわけ
2020年9月、蓮見が大学を卒業するタイミングで「就職する予定のない人だけ残ってください」と告げ、集まった仲間で「ダウ90000」を結成。メンバーはほぼ全員俳優志望だったが、演劇とコントの両方をやりたかった蓮見は、定期的に演劇公演をやることを約束しメンバーを説得。「皆がバイトを辞められるくらい稼げるようになるまでは、絶対続ける」と心に決めた。
2021年には「ダウ90000」のうち5人で出場したM-1グランプリで準々決勝に進出し、話題になった。このころには演劇公演も即完するようになり、少しずつテレビ出演も増えた。2022年末にはメンバー全員がアルバイトを辞め、当初の目標を達成している。
今年7月のABCお笑いグランプリでは、昨年に続き2年連続で決勝に進出。今月には、“コント芸日本一”を決めるキングオブコントで初めて準決勝にコマを進め、さらなる高みを目指す。
これほど結果を残しているにもかかわらず、蓮見は自らを“芸人”とは自称しない。その理由は「恐れ多いから」という。
「芸人さんたちの生まれ持った面白さや、人間味みたいなものは自分にはないので、コンプレックスがあって。『自分はこんなに面白くないし、こんな風にテレビに出て話したりはできないだろうな』と思って」
とはいえ、賞レースへのチャレンジは、“面白い”と認められたい気持ちの現れでもある。
「コントをやっているのに評価される場から逃げちゃカッコ悪いなと思っています。自分たちの公演だけでコントをやってるのは『お高く止まってるな』って(笑)。結局、『芸人より面白くないから、芸人って言わないだけなんだ』と思われてしまいますよね」。
高い評価を得る脚本力と演出力
脚本家としては、2022年に「ダウ90000」の舞台作品で岸田國士戯曲賞候補にノミネート。ドラマ作品では、『今日、ドイツ村は光らない』『8人はテレビを見ない』(『エルピス-希望、あるいは災い-』のスピンオフドラマ)などの脚本も手掛けた。「脚本は、自分自身の体験や、カフェにいるときなどに耳にした日常会話がベースになっています。キャリアを積んだ脚本家には、知識量や経験では太刀打ちできないからこそ、実際に見聞きしたもので勝負をするしかないんです。だから自然と生活に基づいた話になるんですよね」