「そういう風土はどうやったら育つのですか」という谷本氏の問いに、佐藤氏はこう答える。
「やはり、対話を通して解像度を上げることではないでしょうか。コロナ禍が収束して、直接口頭でお話できるようになってきたので、そこを意識してオンラインとオフラインの密なコミュニケーションを使い分けています。例えば、現場からこんな人材が欲しいといった要望があったときに、なぜその人材が必要なのかをリアルで確認し、認識を合わせるように心掛けています。
また現在、事業部と連携し、改めてうちの会社を良くしていくにはどうしたらいいのかを考えるプロジェクトを、事業部ごとに立ち上げています。そこで色々な方に意見を発散してもらい、それを人事の方で吸い上げ、経営へ提言することを今後やっていけたらと考えています」(佐藤氏)
堀尾はこれに賛同し、「これまで話を聞いた経営者や人事担当者も、現場を良くしていくためには対話が重要だと話しています。コミュニケーションの量が、課題や組織状態の解像度を上げる最大の近道なのでしょうね」とコメントした。
「日々の業務を回してくれている現場の声に報いることが人事の使命と思っていますが、まだ道は半ば。次世代リーダー育成のためのeラーニングサイトを立ち上げるなど、様々な取り組みを進めているところです」(佐藤氏)
まずは小さな成功の積み重ねから
佐藤氏のように経営企画と人事を兼ね、人事が経営と社員のハブとして機能することで、社内に双方向のコミュニケーションが生まれていく。それによって、経営戦略と人事戦略の整合性が高まっていく。しかし、それができず人的資本経営に悩む人事担当者は多い。そんな人事担当者達の気持ちを代弁して、谷本氏は最後に「まずは何から始めるべきでしょうか」と尋ねた。「会社によっても違いますし、人的資本の開示がすべてではないと思いますが、目に見えている小さな課題や着手しやすそうなところから取り組むのは、有効な方法だと思います。小さな成功が次のステップにつながり、それを一つひとつ積み重ねていくことで、結果的に大きなストーリーで語れるようになるからです。今までにないくらい人事が脚光を浴びる時代が人的資本経営時代だと思いますので、世の中の人事の皆さんと一緒に取り組んでいきたいです」(佐藤氏)
佐藤氏との1時間に及ぶ今回のトークセッションは、下記アーカイブで全編視聴可能だ。
>> 詳しくは、第10回の音声録音アーカイブへ