米エール大学などが運営するNGO「Conflict Observatory(紛争監視団)」は今月、
ウクライナのロシア占領地における強制パスポータイゼーション(国籍付与)に関する報告書を発表した。ロシアがウクライナ人のアイデンティティー攻撃と、占領地の住民に対するロシア国籍取得の強制を組織的に行っていることの証拠が示されている。
エール大学公衆衛生大学院の人道研究室は、共同設立した同NGOの活動の一環として、ウクライナにおけるロシア系勢力の戦争犯罪を含む国際法違反行為と、人道に対する罪を記録している。報告書によると、ロシア占領地に暮らすウクライナ人は、ロシア国籍を受け入れない限り、深刻な脅威にさらされるという。
ロシアについては以前から、ウクライナの子どもたちの強制移動と違法な養子縁組を行っているとも伝えられている。国際刑事裁判所(ICC)は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、大統領府の子供の権利を担当する大統領全権代表マリヤ・リボワベロワの
逮捕状を出している。ウクライナの占領地からロシアに子どもを移送したことが、国際条約の「ICCローマ規程(国際刑事裁判所に関するローマ規程)」で定められた戦争犯罪と人道に対する罪にあたるとされたためだ。
報告書は、オープンソース資料の包括的レビューに基づいた調査結果として、ウクライナのルハンシク、ドネツク、ヘルソン、ザポリージャの各州の住民は、ウクライナ人をロシア国民にすることを目的とした脅迫や威嚇、人道支援や基本的サービスの制限、拘束、国外退去の脅威にさらされている。これは、ロシアが2014年から、クリミア半島およびドネツク、ルハンシク両州で行ってきたパスポータイゼーションを想起させるものだ。
しかし、問題はさらに深刻だ。人道研究室によれば、ロシア政府は「ロシアのパスポート申請を簡素化する法律を制定した一方で、ロシアの占領当局は、ロシア国籍を持たない人々に対して事実上の制限を課し、パスポートを取得しなければロシア占領地に居住できないようにしている」。制限のなかには、医療サービス、社会保障、人道支援、運転や就労の拒否が含まれる。