欧州

2023.08.11 09:00

ロシアが住民に「国籍を強制付与」 ウクライナ占領地の実態、NGOが報告

遠藤宗生

さらにプーチン大統領は、ロシア国籍を取得しない個人の拘束や国外退去を可能にする新たな条項に署名し、法律として成立させた。報告書によれば、新ロシア派が樹立を宣言した「ドネツク人民共和国」の当局は、2024年7月1日以降、ロシアのパスポートを取得することなくロシア占領地にとどまる「外国人」を収容する施設の設置を計画し始めた。ロシアはまた、法律の改正によって「取得した国籍」の剥奪要件を拡大。ロシア国籍を受け入れた人でさえも、いつ国籍が剥奪されるか分からない事実上の「二級市民」となった。

ロシア国籍を受け入れない住民は、外国人として登録しなければならない。「それをしない者は、ロシア内務省の役所に強制連行され、指紋を採られ、写真撮影される」という。

人道研究室が指摘した行為は、重大な国際法違反だ。占領下に暮らす人々を国籍で差別すること、占領者への忠誠を誓わせることは、ハーグ条約とジュネーブ条約に違反している。こうした行為は「プーチン大統領はウクライナ人を標的にしており、国民としてのウクライナ人を、全体的または部分的に滅ぼすつもりだ」という主張を裏付けるものであり、プーチン大統領によるジェノサイドの立証にまた一歩近づいたことになる。

今回の報告書は、ロシア占領地の悲惨な状況、そして、そこに暮らす人々が、国籍を理由に受けている迫害を浮き彫りにしている。この報告書はまた、ウクライナから領土を奪うようなかたちでの終戦を訴える人々への警告でもある。

報告書は、占領地に住むウクライナ人が直面する脅迫、威嚇、人道支援や基本的サービスの制限、拘束や国外追放の脅威など、国籍に基づく迫害の実態を明らかにするものだ。

forbes.com 原文

翻訳=米井香織/ガリレオ・編集=遠藤宗生

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