北米

2023.08.03

米政府が情報開示請求の審査にAIを導入、一部から懸念の声

Tada Images / Shutterstock.com

米国の司法省や国務省、疾病管理予防センターを含む、少なくとも3つの省庁が、人工知能(AI)システムを利用して情報公開法(FOIA)に基づく情報開示請求を処理する試みを進めている。しかし、透明性の向上を呼びかける一部の市民団体はこのトライアルに懸念の声を上げていると8月2日のNBCニュースが報じた。

各省庁は「FOIAアシスタント」と呼ばれるシステムなどを使用して、市民やジャーナリスト、活動家などからの政府文書の開示リクエストを処理しているという。

「報道の自由のための記者委員会」の弁護士のアダム・マーシャルは、AIが迅速な情報の開示に役立つことを期待しているとNBCニュースに語ったが、いくつかの課題があることを指摘した。彼は「テクノロジーの使用に関する明確な基準」や、それが守られていることを確認するための手順「アルゴリズムの決定に対して異議を唱えるため仕組み」などを整備すべきだと述べている。

マーシャルは、情報公開の担当者が重要な判断をAIに委ねてしまうことを懸念している。政府の内部文書の開示を決定するプロセスには、通常は法的な分析が含まれる。

しかし、AIが長年の透明性の問題を解決してくれると信じる人も数多く存在し、メリーランド大学の教授で、政府のAIの利用の専門家であるジェイソン・R・バロンは、NBCニュースにこう語っている。「政府機関が保有する膨大な記録の検索を自動化しない限り、FOIAを将来的に機能させることは不可能だ。つまり、AIなしではこの問題は解決できないのだ」

1966年に連邦議会で可決された情報公開法は、連邦政府機関に対してほとんどの文書やデータを民間人に公開することを義務づけている。この法の目的は、政府の透明性を高め、国民が政府の決定によりよく参加できるようにすることにある。米国では州レベルでもサンシャイン法(sunshine law)と呼ばれる透明性の規則があり、州レベルの政府機関の文書に市民がアクセスできるようにしている。

米国情報政策局によると、連邦政府機関が2022年に処理した情報公開請求の数は、過去最大の92万8000件以上に達していた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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