シンガポールで岐阜県のプロダクトを扱ってくれている若手の有名デザイナーは「いま、いちばん注目しているのはサステナビリティとインクルーシビティ(包括性)だ」と率直に語った。
マレーシアで飛騨牛と鮎のメニューフェアを開催中の現地の有名レストランのオーナーも、「食のあり方で大切なのは、サステナブルな環境と安心、安全であり、岐阜県の清らかな水だけを飲んで育った飛騨牛や、清流で育まれた鮎の価値を伝えたい」と現地メディアに向けてアピールしてくれた。
もちろん私たちも、本物の日本の自然や文化体験としてのサステナブルツーリズムをアピールし、飛騨牛や岐阜鮎などの食のフェアでは、自然環境に配慮したサステナブルな食、ものづくりでも同様のテーマでアピールを行なってきた。今回、訪問した3カ国の人たちが、日本よりずっと真剣に、それぞれの分野でそのことに取り組み、関心を持ち、そして実際の暮らしの中で活かされているような印象を強く感じた。
現地デザイナーの知事への訴え
前述のシンガポールの有名デザイナーは、エドウィン・ロウといい、まだ40代前半だが、すでにシンガポールの国立博物館やアジア文明博物館内にあるショップのオーナーでもあり、年内にはさらに1店舗オープンする予定だそうだ。
岐阜県とは年間を通じて県のプロダクトの販売・支援などを行う、グローバル・アンテナ・ショップ(通称 G.A.S)協定を結んでおり、今回は、アジア文明博物館内のショプで、県の伝統工芸の技術とシンガポールデザインを組み合わせたタンブラーや豆皿、リサイクル食器などの県産品フェアを実施してくれていた。実は、エドウィンと私たちの付き合いもすでに10年ほどになる。
10年前に初めて出会った当時は、まだ少年のような面影を残していたが、彼がデザインした絵皿がシンガポール政府の正式なお土産品に選ばれたということで、若手デザイナーの期待の星という印象を受けた。
その彼も、今回、トップセールスマンである知事に向けて「アフターコロナの時代では、さらにモノの価値観の深みを追求することが求められるようになった。そしてつくり上げた商品がどう使われて、破棄されるかというライフサイクルまで考えてのものづくりにしないといけない。だからこそ、しっかりとした伝統の匠の技が残る岐阜県とのコラボレーションを続けたい。まさにそれがサステナビリティの具現化だ」と強く訴えていた。