アジア

2023.07.24 09:30

米豪のF35部隊長ら、バーで太平洋での有事対応を構想

ステルス戦闘機F35CライトニングII(Getty Images)

F35は複雑で、整備に手間のかかる機体だ。最も過酷な戦いを遂行するに当たり、派遣部隊は部品を持参するか、海外のどこかに予備装備品をあらかじめ隠しておかなければならない。VMFA-314にとって、10機のF35を擁する第3飛行隊は合理的な受け入れ先だった。
advertisement

米空軍の空中給油機や貨物機は需要が供給を上回っており、アジア太平洋地域における米軍戦闘機の展開ペースを大きく左右する。海兵隊は、空軍の給油・輸送支援なしに展開することも多い。

しかし、急な事態にあっても迅速に行動できる海兵隊の身軽さは、現地到着後の作戦の幅を狭める要因ともなる。

太平洋は広大だ。ウィリアムタウンからオーストラリア最北の戦闘機基地があるダーウィンまでは約2900キロ。ダーウィンからフィリピン北部までは、さらに3540キロある。そこから、西太平洋で大きな戦争が起こる可能性が最も高い台湾までは、800キロだ。
advertisement

燃料満タンでミサイル数発を搭載したF35Aの作戦行動半径は、わずか1000キロ余り。F35Cはもう少し長く飛べる。西太平洋で戦うF35部隊には、2つの選択肢がある。空中給油を何度も行うか、小島に設けた基地から基地へと飛び回るかだ。オブライエンは、「すべては時間と距離と燃料の問題だ」と指摘する。

米海兵隊と豪空軍のチームは、米軍のKC130給油機と豪軍のKC30給油機による一定の現地支援を得つつも、軽量・迅速な展開を選択した。給油機ほぼ不在の戦争のリハーサルである。

つまり、分散型の「ハブ・アンド・スポーク」方式を実践するということだ。これは、飛行隊が最も重い装備をたとえばウィリアムタウンなどの大きな空軍基地に残し、前線に近い簡素な飛行場に少数の整備兵と少量の武器や燃料を配備するもので、フィリピンやマレーシア、日本の島などがそうした拠点となり得る。

オブライエンとカイリーによると、長さ1800メートルの整備された滑走路があれば、どこでも候補地になるという。簡易さを維持するため、島から島へと飛び回る海兵隊部隊は、F35専用の一元化された自律型兵站情報システムに接続することもない。昔ながらのやり方で戦闘機を修理・整備するのだ。

もちろん、受け入れ国が計画を承認する必要がある。同盟国は米豪のF35を自国の領土から出撃させることに同意すると考えられることから、有事の際に米海兵隊と豪空軍のF35による混成部隊が西太平洋上を迅速に移動することは想像に難くない。

今後もバーの紙ナプキンの上で構想された計画から切迫した状況を想定した演習が行われ、そのアイデアをパイロットや整備士、計画立案者が受け入れていくのかもしれない。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事