教育

2023.07.19 07:30

キーワードから読み解く「教育の新潮流」

教育では、どのような変化が起きているのか。これからどんな変化が起きるのか。「イノベーティブ・エデュケーション30」審査委員への取材を通して見えてくる潮流とは。


いま、日本の教育が大きく変わりつつある。小学校・中学校・高校の各教科で教える内容を定めた学習指導要領が、約10年ぶりに改訂。新学習指導要領は、小学校は2020年度、中学校は21年度、高等学校は22年度から実施された。社会の変化が激しく、未来の予測が困難なVUCA時代において、変化に対応し、社会や人生をより豊なものにできるよう学びを変えていく狙いだ。

そこでは、学校で学ぶべき「3つの柱」として、(1)「知識・技能」、(2)「思考力、判断力、表現力等」、(3)「学びに向かう力、人間性等」が示されている。このうち学力テストで評価できない(2)、(3)の要素は「非認知能力(非認知スキル)」と呼ばれ、注目されるようになった。

目立つ変化は、小学校から外国語教育が始まり、プログラミング教育が必修化された点。高校では「情報1」や社会科の「公共」が必修科目として新設された点。また、高校では「総合的な探究の時間」が設けられ、各科目にも「古典探究」「世界史探究」「理数探究」など探究学習が導入されている点だ。

以前から探究学習を実施している学校もあったが、より一般的なものになっていくと考えられる。よく言及されるPBL(課題解決型学習)も、探究学習のひとつだ。新学習指導要領は、一方通行・座学中心の授業から、「主体的・対話的で深い学び」、つまりアクティブ・ラーニングの実現を目指している。

時代の変化に合わせて変わるのは、「教える」内容だけではない。「学ぶ環境」も大きく変わっている。19年12月に文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」で、児童生徒向けの1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークの整備が進んだ。「端末とネット環境は用意されたが、その活用は各学校によってピンからキリまである。格差が現れつつある」と話すのは、「イノベーティブ・エデュケーション30」の審査委員であり、ICT教育に詳しい未来教育デザイン代表の平井聡一郎だ。

「格差こそあるが学校でのICT機器の使用は当たり前になった。これからは、クラウドを活用して、家と学校両方でICTを駆使し、学びを深める段階に入る。だからこそ、『どのような学びを実現するのか』という点に立ち返る必要がある」(平井)

世界的な潮流を見ると、経済協力開発機構(OECD)が19年に提示した「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」では、30年の子どもたちに必要な教育やスキルとして「エージェンシー」という概念を提示。教育関係者の間で注目された。エージェンシーとは、「変化を起こすために、自分で目標を設定し、振り返り、責任をもって行動する能力」だ。「主体性」に近い概念だといえる。
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文=崎谷実穂 イラストレーション=ミシェル・マルコーニ

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