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海外

2023.07.16 07:30

肥満率40%の米国、治療支援が会社選びの基準に

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スタートアップを中心にビジネスのトレンドを、メールで隔週お届けしている「Forbes JAPAN Newsletter」。本連載では、その内容をピックアップして紹介します。

今回は、医師でありスタートアップ投資家である中安杏奈さんによる「医師 × VCが見るヘルスケアトレンド」コーナーから、6月25日の配信記事を掲載します。
 
日本では今年4月に、肥満症に対するGLP-1処方が保険適用となりました。GLP-1はもともと糖尿病治療向けに開発された薬で、インスリンの分泌を促し、食欲を抑制します。近年は肥満治療やダイエットへの応用も注目され、特に肥満率が約40%のアメリカ(日本は約5%)では、多数のデジタルヘルススタートアップがこの肥満領域に参入しています。

最近米国では「肥満治療を支援してくれる会社で働きたい」という人が多く、企業が治療を福利厚生として提供するケースや、肥満治療を行っているスタートアップと企業が提携する例も増えてきました。

雇用主向けのプログラムとしては、オンライン診療最大手の米Teladoc(テラドック)慢性疾患マネジメントプラットフォームのOmada(オマダ)などがGLP-1処方を含めたサービス展開を5月から始めました。個人向けには、D2Cウェルネスで有名な米Ro(ロー)が1月に、GLP-1処方にオンライン診療や栄養指導、コーチングを組み合わせたテーラーメイド体重管理プログラムを発表しています。

一方、このようなサービスが広まることには懸念点もあります。肥満は、生活習慣の長期的な管理が必要な慢性疾患であるにもかかわらず、安易に薬だけ処方され、適切な経過観察がなされない点です。あまりにも需要が急増しているため、偽のジェネリックが販売されていることも問題視されており、FDAが注意喚起しています。また、薬の価格が高価であるなか保険償還されないケースも多く、経済的理由から治療を中断する人も増えています。

そんななかで注目を集めているのが米Calibrate(カリブレート)という肥満治療に特化したスタートアップです。2020年に設立されたばかりですが、既に累計$165M(約230億円)資金調達しています。上記の懸念点を解消するため、GLP-1処方だけではなく生活習慣改善に長期的に伴走することを重視している点が特徴的で、最低1年間の契約が必要です。

肥満が社会問題として顕在化するなかで、薬への容易なアクセスを提供するデジタルヘルス。慢性的疾患としての肥満に対し、根本的治療に役立つだけの「質」の重要性が増していると言えるでしょう。


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文=中安杏奈

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