マウスを使った実験では、インフルエンザに感染させたマウスの体温が38度以上になると高い抵抗力が示された。その際の血清や盲腸内容物を解析したところ、胆汁酸、とくに二次胆汁酸の増加が見られた。胆汁酸は肝臓で合成され脂肪の分解を助ける物質(一次胆汁酸)で、二次胆汁酸は、それが腸内細菌叢によって変換されたものだ。これをマウスに投与すると、インフルエンザや新型コロナウイルス感染後の生存率が大きく改善された。
また、新型コロナに感染した患者から採取した血液を調べると、軽症患者グループに比べて中等症グループでは胆汁酸レベルが明らかに低下していたことから、ヒトにおいても新型コロナの重症化と胆汁酸レベルとに逆相関性があることが認められた。反対に二次胆汁酸の量が、新型コロナ感染者の重症度を予測するマーカーにもなるという。
大切なのは腸内細菌叢の働きということだ。腸内細菌叢を強化するのは食物繊維。食物繊維を多く含む餌を与えたマウスのグループと、食物繊維の少ない餌のグループ、腸内細菌を減らしてしまう抗生物質を与えたグループとで抵抗力を比較する実験では、低食物繊維と抗生物質のグループの抵抗力が明らかに低下していた。また腸内細菌は体温が上がると活性化する。基礎体温を下げたマウスは重症化する率が高く、基礎体温が38度のマウスは新型コロナウイルスの致死的感染でも抵抗力を発揮できたということだ。
この発見はウイルス性肺炎の重症化を抑える新薬の開発にもつながるとのことだが、普段から食物繊維を多くとり、運動などで基礎体温を少しでも上げてやれば、抵抗力を高めることが可能なはず。やっぱり、食事と運動は重要だ。
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