リーダーシップ

2023.07.11 14:30

「リゼンティーズム」など次々に生まれる人事用語は問題解決に役立つのか?

安井克至
第2に、リゼンティーズムのような問題の解決策とは、どういうものなのだろうか? あなたがどんなアドバイスを読むかによって、職場の解決策は変わってくる。例えば、仕事の目的意識を高める、もっと有意義な評価をする、従業員同士のコミュニケーションを深める、仕事のやる気をくじく障害物をなくすなど、さまざまな可能性がある。

それらはどれも実にすばらしい解決策のように思えるが、それと同じ解決策は「静かな退職」や「うわのそらの従業員」など、他の流行語が表す状況も改善できるだろう。我々が新語をひねり出せば出すほど、有意義なかたちで職場を改善するためにとるべき根本的な対策から、注意をそらされてしまう。

最後に、現代の職場には、解決すべきいくつかの根深い問題がある。だが、そうした必要な変化を起こすために割くべき資金や注意力のリソースを握っている人は誰だろうか? そうした意思決定者は、圧倒的にCEOかCFOであることが多いだろう。

ここで、すべての人事担当幹部が理解しなければならないことを伝えておこう。100万人が回答したアンケート調査「What's Your Communication Style?(あなたのコミュニケーションスタイルは?)」の結果から、財務分野のリーダーは、分析的コミュニケーションをとりがちであることがわかっている。

分析的コミュニケーションをとる人は、事実に基づいたデータや実際の数字を好み「事実やデータを使わない人」を疑う傾向にある。また全般的に、極めて具体的な言葉を好み、あいまいな話し方を嫌う。

それに対して、人事分野のリーダーに最も多いスタイルは、感情的なコミュニケーションだ。このスタイルをとる人は、感情を表す言葉やつながり、気持ちに価値を置く。

リゼンティーズムのような言葉をつくりだすことは、事実に基づいたデータ、実際の数字、具体的な言葉を使ったコミュニケーションの一例とは言い難い。

筆者は、従業員を悩ます深刻な問題に取り組むことには、全面的に賛成している。燃え尽き症候群が正真正銘の問題であることは疑いようがないし、オフィスに従業員を戻そうとするポリシーの多くは準備不足だし、コミュニケーションの状態がひどい職場はたくさんある。数えあげればきりがない。

ただし、新しい流行語を安易に作り出すことについては疑問がある。多くのCEOやCFOは、新しい流行語が現れるたびに「眉唾もの」という顔をする。それは、真の問題を解決しようとする人たちにとって有害な状況なのだ。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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