これは奇妙なことで、ロシア軍にとって不吉な兆候だ。歴史的に、防御する側の軍隊では攻撃する側の軍隊よりも死傷者が少ない傾向にある。攻撃側は姿をさらけ出さなければならないが、防御する側は身を潜めることができるからだ。
だがウクライナ軍の攻撃力や適応力、的確な砲兵支援により反攻部隊はこれまでの傾向を覆しているようだ。つまり、ウクライナ南部にいるロシア軍は手に入るものならどんな補強でも必要としている。たとえその補強が70年前のT54やT55であってもだ。
ウクライナ軍が第二次反攻を開始したウクライナ東部では、T54とT55はこれまでとは異なる方法で活用されている。ロシア軍はこれらの古い戦車に4、5トンの爆薬を詰めてからウクライナ軍の戦線が見えるところまで走らせ、ギアを前進に固定し、それから乗員が脱出する。
VBIEDをウクライナ軍の陣地に向かわせて、タイミングを計って引き金を引くか、ミサイルやロケット弾を命中させて爆発させるというものだ。4、5トンの爆薬を搭載したVBIEDは約150メートル離れた無防備な敵を殺し、約900メートル離れた兵士を負傷させることができる。
もちろん、ウクライナ軍のドローンが前線をパトロールしていることが問題だ。最近成功したVBIED攻撃で検証可能な例は少なくとも1つあるが、ウクライナ軍がいち早く発見してロケットや爆薬を積んだドローンで装甲車両を使った即席爆発装置を爆破した例はもっとたくさんある。
米陸軍の退役中将マーク・ハートリングはロシア軍の最初のVBIEDの話を聞いた後「戦車に爆薬を詰め込み、志願する兵士に運転させ、敵に向けて走らせてから飛び降りる。なんと愚かな装甲作戦をロシア軍はとっているのだろう」と言って考え込んだ。
実際には「愚か」という言葉は間違っているかもしれない。「自暴自棄」と表現した方がより正確だろう。
(forbes.com 原文)