暗号資産

2023.07.05 08:00

米SECの暗号資産への「敵視」は分散型金融DeFiにまで拡大する

SECの主張の「欠陥」

SECは、暗号資産ビジネスを抑制するための施策が、デジタル資産市場で横行している詐欺や価格操作から投資家を守るためのものだと主張している。しかし、業界関係者の間では、昨年11月のFTXなどの複数の企業の破綻が当局による監視の強化につながったという見方が一般的だ。

暗号資産の決済とコンプライアンスのインフラを提供するBanxa社の米国支社のCEOで最高法務責任者のリチャード・ミーコも、SECのトークンの分類にはほとんど論理性がないと指摘する。「これらのコインを証券として位置づけることは、米国におけるデジタル資産の一般的な普及を遅らせるための、善意から生まれた誤った試みなのかもしれない。しかし、仮にそれが事実であったとしても、香港やドバイ、EUなどの米国以外の場所で、暗号資産の導入は広がっている」とミーコは、フォーブスに寄せたEメールでコメントした。

一方、米国の取引所は実質的にトークンの上場廃止を余儀なくされている。ニューヨークを拠点とするBakktは、競合のApex Cryptoを1億5500万ドルで買収した数カ月後に、SECによって名指しされたソラナ、ポリゴン、カルダノの3つの取引を停止した。

次の規制対象はDeFiになる

「この措置は、自社の収益だけでなくパートナーの収益を奪うもので、決して容易な決断ではない」とBakktの顧問弁護士のマーク・ダヌンツィオはいう。「しかし、環境の不安定さを考えると、この措置は短期的なものであり、規制が明確になるにつれて、私たちは、法律を遵守しつつコインを再上場させるつもりだ」と彼は付け加えた。

暗号データプロバイダーのKaikoによると、米国を拠点とするプラットフォームで上場廃止されるコインの割合は、主にバイナンスとBittrexの2社がSECに提訴されたことにより、前年の8%から2023年に22%に上昇した。

一方、ウィルキー・ファー・アンド・ギャラガーの顧問弁護士のセリグによると、SECはビットコインを除くすべての暗号資産を証券として名指しで訴えるだけのリソースを持っているわけではないが、人気のトークンの代表的なサンプルを選んだことで、より広範なトークンに適用される可能性のある先例を作ったという。

「とはいえ、Howeyテストは何が投資契約であり、何が投資契約でないかを定義している。SECは、すべてのトークンが証券であるかどうかを争うためにリソースを費やしたくはないだろうが、Howeyテストの要求に従う必要がある。つまり、SECもしくは議会が暗号資産に関する実行可能な法の枠組みを作るまでの間、我々は、新たなトークンが証券ではないものとして提供されるのを見続けることになるだろう」と彼は述べている。

一方、ハンブルクを拠点とする投資銀行のベレンベルク(Berenberg)は、ステーブルコインと分散型金融(DeFi)がSECの次のターゲットになる可能性が高いと考えている。「SECの次のターゲットは、USDCとテザーを含むステーブルコインで、これらは未登録証券とされる可能性が高く、DeFiプロトコルもそうなる可能性が高い」と同行の株式調査アナリストのマーク・パーマーはフォーブスに寄せたコメントの中で述べている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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