報告書では、エネルギーシステムのパフォーマンス(System performance)とエネルギー転換を可能にする環境整備(Transition readiness)の2つの基準を元に「エネルギー転換指標」(ETI)を策定し120カ国を評価。ETIスコアランキングのトップはスウェーデンで、2位にデンマーク、3位にノルウェーが続いた。日本は27位だった。
『ジェンダーギャップ・レポート』をはじめ、年間を通じてさまざまな報告書やランキングを発表している世界経済フォーラムだが、そもそもランキングにはどのような意味があるのか。そして27位という結果から日本は何を学び、どう未来につなげることができるのか。
世界経済フォーラムのエネルギー・マテリアル部門長、ロベルト・ボッカに話を聞いた。
エネルギーへのアクセスは公平か?
──28日に発表した『効果的なエネルギー転換の促進2023年報告書』によると、ETIのスコアは過去3年間で全体的に停滞しています。その理由は何でしょうか。私たちはエネルギー転換について、エネルギーシステムの安全性、持続可能性、公平性の3つの側面から測定している。エネルギー転換の動きが停滞している理由は、公平性の部分が後退しているためだ。
この事実には私たちも少し驚いた。というのも、1年前や半年前にはエネルギー危機やマクロ経済危機、パンデミックなどがエネルギー転換に影響を及ぼす可能性があると言われていた。しかし今年の調査でわかったのは、最も影響を受けたのはクリーンで持続可能なエネルギーへの転換ではなく、手頃な価格でエネルギーにアクセスする可能性が減少しているという点だった。
家庭レベルで見ると、エネルギー価格は非常に高騰している。これは新興国においても、先進国においても同じだ。問題は、先進国は経済に余裕があるため(政府などの公的機関が)補助金などを出してきたが、新興国にはこのようなことはとてもできない点にある。
私たちは環境に配慮したエネルギーへの転換にばかり目を向けて、公平なアクセスについては見過ごしがちだ。だからこそ、私たちの調査では公平性という観点も重視している。
──日本でもエネルギー価格は上昇しており、多くの人々の暮らしに影響を与えています。
日本は天然資源に溺れることなく、イノベーションを通じてエネルギー問題への解決策を見出そうとしている。エネルギーという観点において私のお気に入りの国の一つだ。
日本は数年前からエネルギー効率の向上と省エネルギーを奨励するトップランナー・プログラムを実施している。だが、これは一般的に、私たちが何かを生産するために大量のエネルギーを使用する際に関わることだ。
では、そもそもエネルギーの消費量を劇的に削減することは可能なのか。使用量の削減には何が必要なのか。電力使用量を削減できなければ製品の価格が上がり、競争力の低下につながる。つまり、エネルギー転換は供給サイドだけの問題ではなく、需要サイドの話でもある。需要にどう対処するのかも重要な課題なのだ。