帝国データバンクは6月21日、民間企業のDX利用実態に関する調査結果を発表(※1)。DXへの取り組み状況について、「すでに対応している」企業は全体で16.4%と2割に満たず、そのうち専門部署を置く企業は3.5%にとどまることが分かった。
売り上げの規模別にDXへ「すでに対応している」企業の割合を見ると、売上高が「100億円以上」で最も高く、半数(50%)に。うち専門部署を置く企業は19.8%で、他の売り上げ規模より10ポイント以上高かった。続いて「50億~100億円未満」(33.6%)、「30億~50億円未満」(27.3%)、「10億~30億円未満」(19.7%)、「10億円未満」(9.1%)の順となり、売り上げ規模が小さくなるほどDXへの取り組みが進んでいない状況が浮き彫りになった。
主な業種別で見ると、DXへ「すでに対応している」割合が突出して高かったのは「銀行」で82.1%。そのうち「専門部署がある」と回答した銀行が66.3%を占め、3行に2行で専門部署を設置していることが明らかに。次いで総合商社や貿易商社などを含む「各種商品卸売業」(※2)が61.3%で続き、「民間放送業」(57.1%)、「国内・国際電気通信業」(53%)、「高等教育機関」(49.5%)、「ソフトウェア業」(48.4%)が続いた。
さらに、DXへ「すでに対応している」企業について、人手不足の状況との関係を調べたところ、正社員が「不足している」と答えた企業でDXへ「すでに対応している」割合が26.5%となり、「適正」(21.4%)、「過剰」(21%)と答えた企業を上回る結果に。企業が、DXで人手不足を補完しようとしている姿勢がうかがえた。
他にも、DXへ「すでに対応している」企業を、5つの経営指標で分析(※3)。すると、従業員数が「5人以下」の企業では、「成長性」の指標が突出して高く表れ、従業員数が多くなるに連れて、全体平均へ近づいていく傾向が見られた。「生産性」については、DXに取り組んでいる従業員数が「6人〜20人」「21人〜50人」の企業で、全体平均の1.1倍を超えていた。これらのことからDXへの取り組みは、小規模企業では「成長性」、中小企業では「生産性」がより重要な要因となることが示唆される。
帝国データバンクは調査結果について、「ビジネス環境が激しく変化するなか、企業が生き残るためにはデジタル化やDXへの取り組みが求められている。政府による中小企業への支援策とともに、中小企業はデジタル人材の確保に加えて、リスキリングなどを通じて既存従業員のデジタルスキル向上や、社内全体の能力向上に関する施策を実施することが肝要となろう」と総括した。
※1… DXへの対応状況について個別にヒアリングできている12万5242社を自社データベースから抽出。そのうちDXに対応していると回答した企業2万548社を分析対象とした。本調査での「DX」は、ペーパーレス化やIT化などの対応等、DXに向けた準備段階のものを含む。
※2… 従業者が常時100人以上のもの。
※3… 5つの経営指標では、「収益性」は売上高総利益率、「生産性」は一人当たり売上高、「安全性」は自己資本比率、「成長性」は売上高伸び率、「効率性」は総資本回転率を用いている。
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