教育

2023.06.23 16:15

藤野英人×リ・レウォン×工藤勇一 よりよき未来をつくるための「学び」とは

(左から)藤野英人・李禮元(リ・レウォン)・工藤勇一

リ・レウォン(以下、レウォン):いまの学校は、自分の頭で考え、自律的に行動することを認めませんよね。僕が不登校になった理由もそこにあります。自分なりに工夫してノートを書いていた小学4年生の時、「板書通り、書き直しなさい」と先生に怒られたんです。授業で自分の頭で考えて答えても、教科書と違うことを言えば、取り合ってもらえない。求められるのは、答えのある問いに対して、決められた通りに、早く正確に完璧にこなすことでした。AIやChatGPTが出てきたこれからの時代、「答えのない問い」に対して自分で考え抜く力が、より大切になってくるはずだと思います。
advertisement

藤野:レウォンさんの言う「答えのない問い」のなかでも、子どもたちに最も向き合ってほしいのは「どう生きていくか」です。親や教師が、子どもに将来を尋ねる時に「どんな職業につきたいか」を問うことに、私とレウォンさんは、強い違和感をもっています。

レウォン:子どもにはそもそも職業体験がなく、どんな仕事があるかも知らない。だから、サッカー選手や先生など「よくある夢」を口にし、それをかなえるため、親や先生の誘導で、受験へと向かっていく。そうしないと幸せになれないという価値観が当たり前のようになってしまっています。でも本当は、何の職業につくかより、どんな自分でありたいかが大切なはずです。

藤野:優しい人、たくましい人になりたいのか。家庭生活を大切にしたいのか、のんびり生きたいのか。どういう人でありたいのかという「be(あり方)」が大事。日本では、beを考えないまま、社会に出てしまっている人が多い。それを問う場所も、ほぼありませんね。
advertisement

レウォン:だから、僕は「之楽館」という学び場をつくりたいです。そこは、どんな大人になりたいか、どんな自分でありたいかを考えられるように、自分の未来像になるような「カッコいい大人」から学べる場所にします。僕が起業して、事業に挑戦する過程で出会った人たちのなかに、カッコいい、いきいきとした大人たちがいました。皆さん、とても個性的で、仕事に誇りをもって、社会貢献されてます。そんな方々との出会いの場、学び場をつくるのが「之楽館」というプロジェクトです。

藤野:「之楽」とは、論語の中に出てくる「子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者(これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」からの引用でしたね。

レウォン:そうです。知ることよりも好きであることよりも、楽しもうということを中心とした学校にしたいと、之を楽しむ館で「之楽館」と名づけました。いかに楽しく学べるか。自分の大好きな元素の魅力を伝える「元素カルタ」、自分の苦手な漢字ドリルをやる気の出るものにつくり変えた「漢字mission」といった僕がこれまでに開発してきた教材も、そうしたコンセプトから生まれています。
次ページ > 日本中の教育を「自律型」に変える

編集=フォーブス ジャパン編集部 写真=ヤン・ブース

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事