テクノロジー

2023.06.23 07:30

日本の宇宙ビジネス急成長 スタートアップは5年で50社超に

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日本郵船は、衛生データを活用して船舶運航の安全や効率化、環境負荷の低減を目指し、船舶が衝突や座礁などで止まっている時間を指す「ダウンタイム」の減少や、二酸化炭素や窒素酸化物などの排出量の精密な計測を行う予定です。
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また、損保ジャパンは、宇宙旅行事業者向けのリスク管理サービスや、宇宙旅行社向けの旅行保険の開発を手がけるスタートアップと協業することを目指し、宇宙産業のビジネスモデルを分析して保険の作成に生かすとしています。

宇宙ビジネスを牽引するスタートアップ

5年前にはわずか10社程度であった日本の宇宙スタートアップは、現在50社を超えるほどに増え、日本の宇宙ビジネスの勢いを牽引しています。宇宙ビジネスの産業発展を支える一般社団法人SPACETIDEの共同設立者兼COOである佐藤将史氏は、日本の宇宙ビジネスの特徴を、宇宙と異業種のかけ算により価値創造を行うユニークなスタートアップが、多数存在感を発揮している点にあると言います。

時給換算13万ドル(約1800万円)の宇宙飛行士の作業コストを、汎用型ロボットで100分の1にする。そんな壮大なビジョンを掲げ、宇宙向けの自律制御ロボットを開発しているスタートアップのGITAIは、創業5年目の2021年にはNASAと契約し、ISSで同社が開発したロボットアーム「S1」を使った太陽光パネルの組み立てなどの作業実験に成功するなど、破竹の勢いでビジョンの実現へと進んでいます。

宇宙空間でのロボットによる汎用作業は初の快挙で、日本のスタートアップが宇宙開発の新たな地平を切り拓きました。
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S1は、宇宙ステーションなどの軌道上サービスや、月面基地開発における作業の自動化を目的とし、AIを用いた自立型制御と、地上のオペレータによる遠隔操作が組み合わされることで、従来のロボットアームでは困難だった難しい作業を行うことができます。

同社の売りは、人間の手の動きや力加減など、精密な動作を再現できる高精度なロボティックス。月面で科学的な実験やソーラーパネルなどの組み立て作業ができる月面ロボットローバーも開発しており、将来的には、月面の都市建設にも使用できるようになると見込んでいます。

また、人工衛星を使ったインターネット通信の普及、衛星データを活用した「超スマート社会」の実現など、宇宙利用による効果が幅広い産業に広がり世界的に人工衛星の需要が高まる中、人工衛星用地上アンテナのネットワーク化や設置支援サービスに取り組むインフォステラが、北海道大樹町に、アンテナを設置・運用するための地上局サイトを開設しました。

官民連携が鍵、持続可能な宇宙ビジネスの未来

世界経済フォーラムのパートナー企業である日本のスタートアップispaceの、初の月面着陸ミッションが失敗に終わったように、すべてのチャレンジが成功するわけではありません。しかし、宇宙でのさらなる機会を開発するための努力は続いています。そして、官民が連携して持続可能な発展を目指すことなしに、こうした弛まぬ努力の成果を最大化させることは不可能でしょう。

2022年に開催された世界経済フォーラムのダボス・アジェンダに、宇宙から生中継で参加した宇宙飛行士のマティアス・マウラー氏は次のように語ります。「宇宙にアクセスできないような未来を望む人はいないでしょう。宇宙を綺麗なまま維持し、誰もがアクセスできるようにするためには、対策を講じる必要があります。私たちの経済や日常生活は、宇宙にあるものにあまりにも大きく依存しているのです」

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
過去記事はこちら>>

文=Naoko Kutty, Writer, Forum Agenda; Naoko Tochibayashi, Public Engagement Lead, World Economic Forum, Japan

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