ターニングポイント2 現CTO上赤と出会い、有料版アプリに成功
大学を卒業した2015年、幾嶋はソフトバンクに新卒で入社。Globeeを成長させるためにももっとビジネスについて学びたいと思っていたところ、「会社を経営しながらでもいいから一緒に働こう」と人事から言われたことが決め手になったという。幾嶋は、平日夜と週末を使ってAI英語教材サービスabceedの開発に着手し始めたが、ライセンス獲得の難しさや資金不足などにより難航。まずは、abceedの開発にコミットしてくれるエンジニアが必要だった。そこで幾嶋は、ソフトバンク入社2日目に出会ったエンジニアの上赤一馬に声をかける。
「上赤に開発を手伝ってもらったところ、アプリが1週間ほどで完成して、バグもなく、サクサク動くものができたんです。これまでとは開発速度もクオリティも圧倒的に違いました」
ただ、Globeeに参加しないかと声をかけるも、エンジニアの上赤は、なかなか首を縦に振らなかった。「俺は3年後くらいでいいかなと言っていました。ソフトバンクでも評価されていたようですし、この状態で入社するのはリスクが高いと思ったのかもしれません」と幾嶋は振り返る。
開発は外注するという選択肢をとったが、もう一つの壁であるライセンス獲得は簡単ではなかった。
まず幾嶋は、出版業界のキーマンを探し、アプリでの教材利用を肯定してくれる人物を集めようとした。一人でもいれば、そこから波及して、教材提供が始まるのではないかと踏んだのだ。しかし、結果は全敗。全ての出版社からNOを突きつけられたという。そこで幾嶋はこんな一手を打った。
「今度は、教材の著者一人ひとりに『先生の本をアプリ化させてください』とお声がけしていったんです。そのうちの一人で、神崎正哉さんというTOEIC教材で有名な方が、ちょうど自身の出版社を立ち上げようとしていました。神崎さんに構想をお話しすると、『ぜひ自社の本をアプリ対応させてしてほしい』と返答をもらい、そこから一気に突破口が開けました」
ライセンス契約は次々に決まり、数百もの教材がアプリ上で展開できるようになった。当時から学習アプリは他にも存在していたが、abceedで利用できる教材数が差別化となり、特に資格試験対策という分野で地位を確立した。
入社2年後の2017年1月、幾嶋はGlobee事業にフルコミットするためにソフトバンクを退社した。
しかし、本格的な収益化を目指し有料版のabceedを発表したとき、問題が起きた。CVRとして定めた購入数は期待値を超えたものの、リリースされたアプリは、「買ったデータが消える」「アプリ学習ボタンを押すと教材読み込みに2〜3分かかる」など、バグだらけで大炎上したのだ。