研究を率いたテキサス大学オースティン校のアンドリュー・ケップは「子ども時代の経験とスキルは、さまざまな成長過程を経てもなお、成人後に影響を与えることが裏づけられた」と説明。子どもが自分の注意力と行動を制御できるように支援することで、後の人生に良い効果が生まれると指摘した。
この研究では、米国と英国の子どもが成人になるまでを追跡したデータを検証した。研究の狙いは、ニュージーランドで実施された「ダニーディン研究」と呼ばれる画期的な研究の知見が、他の国にも当てはまるか否かを調べることにあった。
ダニーディン研究は2011年に発表されたもので、約1000人の子どもを20年間にわたって長期追跡したもの。児童期の自己制御に関する問題が、成人期における好ましくない結果と関連することを初めて大規模研究で示したとされている。
今回の研究では、米国の子ども1168人を誕生から26歳まで追跡したデータと、英国の子ども1万6506人を42歳まで追跡したデータを検証した。
対象者は児童期に複数回、保護者・教師と共に面談を行い、家庭と学校での衝動性、注意欠如、多動性などが調査された。成人後にも、教育、キャリア、経済的状況、心身の健康について聞きとり調査を行った。その結果を分析した論文は5日、学術誌「Developmental Psychology」に掲載された。
研究チームが驚いたのは、今回の結果が、2011年の研究結果と一致していたことだ。「つまり、自分の注意力と行動を制御する子どもの能力は、重要な生活スキルであるとする説に、より確固たる根拠ができた」とケップは説明する。
ただし、2011年の研究では、注意力、衝動性、多動性をおおまかに検証していたのに対し、今回の研究チームは、そうした行動の各側面の影響を個別に調べたいと考えた。
その結果、注意力の欠如は、学校の成績や就職率、賃金の低さと関連していることがわかった。それに対して、衝動性と多動性は、警察が関わるトラブルの多さや、刑務所に入れられる可能性の高さに関連していた。